第64悔 マイノ・リッティ・リポート(破):ハンドジョブ&ヘアジェル
文字数 1,817文字
さて、当然ながらおよそ五万人もいたと言われる観客と議会メンバー、および関係者の内、現在も健在な人間などもはや地球上に一人も存在しない。
それでも彼ら彼女らが残した日記や手紙などの文献資料と、親族や知人・友人に語って聞かせた逸話、自慢話などの
それらを持つ者を総じて関係者とするが――彼らに聞き取り調査をしていく内に、新事実が“発掘”されたので、今日はご紹介したい。
まず、ちょっとした軽めの珍事から語るのが肩慣らしにもちょうど良いだろうと思う。
皇国第二皇子エンリケの
もっとも、“この時”はまだ祖父からあの悪名高き食品加工会社『ゴールデン・ソイレント』を継いだばかりの十一歳の少女社長に過ぎなかったが。
その彼女に皇女イサベラが声を掛けた場面で、議事録にはこう記されている。
《 ファニチャード・デルガド、イサベラ皇女に「ありがたきお言葉です」とお辞儀。その前髪、天頂方向にピンと立ち上がり固まっている。 》
これは何なのだろう?
この段に至って初めてファニチャードの前髪に言及されているのだが、それが逆立っているのだ。しかも、固まったまま。
わざわざ言及したと言う事は、それまでは普通――何でもなかったと言う事だろうと推測した俺は、ファニチャードの関係者をあたり聞き取り調査をしてみた。
これがやはり大変なもので、三百人近く聞き取りをしたところでようやく事態が“立体化”してきた。
“立体化”と言っても、聞き取ることの出来た小さな話、エピソードを組み立てるのは“発掘人”の俺なので、多少は解釈に
――で、笑える話なので、結論から言ってしまおう。
ファニチャードの前髪を逆立たせていたのは、他でもない――エンリケ後悔皇子の精子だった。
まぁ、正しくは精液と言った方が良いのかも知れないが、とにかく皆さんご存じのあの白濁液だ。
何故そんなことになったのかを説明しよう。
イサベラ皇女が命じ、近衛騎士二名がイヴァノフを担ぎながら円卓の周りを七周する間に、どうやら暇を持て余したのかファニチャードはエンリケ皇子の“十三センチ砲”を手で
――十一歳の少女が、十六歳の皇子のモノを?
と、俺も最初は驚いたが、どうもこの時代はそういう感じだったらしい。
調べていくと、エンリケ皇子は一度ではなく三度も四度も会議中だというのにファニチャードに、いわゆる『手コキ』をしてもらっていたことがわかった。
二人はこの日が初対面だったというから、『大後悔時代』の人物には恐れ入る。
しかし、五万人もいた大観衆にその行為がバレることはなかったようだ。
当時のエンリケ皇子の衣装が今も博物館に残っているので、機会があったら見てもらうと良いが、とにかく豪華で壮麗であり、マントの下で多少、少女の小さな手が
ところが、逆さにされたイヴァノフが周回を重ねるごとにイサベラ皇女の
皇女股からの光の衝撃波と共に飛び散った皇子の白濁液は、ちょうどファニチャードの頭頂部あたりに掛かった。
頭部に違和感を感じたファニチャードは髪をかき上げ、ヘアジェル代わりとなった皇子のスペルマによって、前髪はそのまま固まってしまったという訳だったのだ。
この話が俺の中で立体化され組みあがった時は、俺自身も「こんな事、あるもんかい(笑)」と
つまり、俺が三百人に聞き取りするまでもなく、すでに当時、本となって出版されていたのだ。
これには俺もマイッタね!
第64悔 『マイノ・リッティ・リポート(破):ハンドジョブ&ヘアジェル』
おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆