第54悔 飛翔天女の女股の羽衣
文字数 2,429文字
《 さて、当時、民衆の間で
前述したように、彼女は幼少のころから誰彼構わず『
赤子用のベッドでスヤスヤと眠るエンリケの顔面に
そうしているうちに当然、エンリケ皇子は目を覚ますわけだが、それを好機と見たイサベラは、『
この逸話にイサベラとエンリケの真の関係性が示されている。
つまり、親代わり、あるいは教育係のつもりでイサベラは異母弟エンリケに物語を聞かせてやっていたのだ。
皇女は、時に『
九歳で皇立ルーム大学を飛び級で卒業してからは、更に熱心にエンリケを教育したものだった。
このエンリケの教育熱心な初代家庭教師は、弟が難しい問題を解いたり、あるいは試験に合格したりすると“ご褒美”として『
まだまだ幼いエンリケには異母姉の行動は全く意味不明だったが、「なぜか懐かしい気持ちになったものだ」と後に回想している。
ところが順調に、あまりにも美しく成長してしまったせいで、イサベラは十五歳の時にエンリケの家庭教師をクビになってしまった。
――元々、誰に言われるわけでもなく勝手に教育を施していただけだったが――十歳になったエンリケに姉の“
代わりにトスカネリ・ドゥカートゥスが二代目家庭教師の任に就いた。
そういった訳だから『第一悔 皇国後悔会議』の議事録に発言が残されていたようにエンリケ皇子の「姉上の『
――筆者も当初はこの姉弟間の関係性を疑っていたため、本書を
~メルモモ・カベルスキー著 『V for Vaginatta (Vは『皇女股』のV)』より抜粋~
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「さぁ、弟よ! 我が偉大なる『
イサベラの声で途方に暮れていたエンリケの脳が
「そ、それはもう! 懐かしゅうございました」
エンリケが姉に頭を下げると、付き従うトスカネリやタイタスらも
「
「ほほほ! 言いおるわ、エンリケ」と上機嫌の
「いえいえ、本当の事でございます。現にこの隣にいるファニチャード嬢も先ほどの姉上の『
すると、ファニチャードは令嬢らしく膝を屈伸させ社交的な挨拶をイサベラにした。
「なるほど、なるほど。
すると、イサベラは再び〈スックッ〉と玉座のひじ掛けの上に立った。容姿端麗、聡明叡知だけではなく、彼女は運動神経も人並み外れていた。人々は、そんな姿に『神』を見るのだ。
そして、
「ここの五万はおろう大観衆の一人一人に『
「
エンリケとしては――とにかく姉上に自慢の『
会議に学者が居ないのは確かにボクのミスだ。姉上に付け入る隙を与えてしまった。しかし、とにかく今日のところは姉上に帰ってもらわないと、話が……会議が進まない!
「見事な機転! 恐れ入りましたぞ、エンリケ様」と後ろからトスカネリが小声で皇子に感謝した。
「先生、姉上が帰ったら我々も円卓に座り、学者の代わりとなり後悔会議を続行しましょう!」とエンリケがイサベラに頭を下げたまま返した。
「さすがですぞ、皇子!」と後悔卿も感心した。
イサベラはすっかりその気になり、
それはイサベラをよく知る者たちによって『
『
それは両脚を大開きにし、『V』の字にすることで浮力が得られる仕掛けになっていた。
「今日のところは我が飛翔力を持って客席中に『
「もちろんです! 姉上!」と調子を合わせる弟が満面の笑みで姉上に両手で敬礼した。
イサベラは玉座を飛翔台として宙に舞い上がり『V』の字のまま、客席に向かっていった……。
第54悔 『飛翔天女の女股の羽衣』 おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆