第57話

文字数 546文字

真夏のある日のこと。不意に流しそうめんをやろうということになって、裏山に青竹を取りにいった。青竹を切り倒すのにはそれほど手間はかからなかったが、竹を縦に割る作業が意外や意外たいへんで、ただのぶきっちょという噂もあったが、とにかく手こずった。作業途中で節だけ抜いて筒のままで流すかという、わけのわからない案も出るほど汗だくになった。

そしてなんとかふたつに割り、節も落とすと、「ヘイメン、流そう麺!」ってことで、プールから帰ってきた隣家の子どもたちも一緒になって、いよいよ流しそうめんがはじまった。

竹はV字にセットして、掬い損ねても振り返るだけで再チャレンジできるという仕様にしてみた。

麺つゆは希釈しない方がいいということを教えてもらっていたが、たしかに薄めていたら物足りなかったにちがいない。

戸外でみんなでワイワイやりながらの流しそうめんは、ほんとうに楽しかった。そしてさらにお楽しみとして、ピンクのそうめんを掬ったラッキーな人は、あとでみんなにケーキをおごることになっていた。

結局、見事にその幸福な人物となったのは、山田で彼のその時の弁が奮っていた。

「智に働けば角が立つ、流れに棹ささなけりゃ食べれない。意地を通せば窮屈だ。とにかくしあわせは、みんなに分けないとね。流しそうめんサイコー‼︎」


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