第30話

文字数 194文字



若い女の魚売りが
天秤棒を担いで
村に魚を売りにきた

少し前に戦争があり
貧乏な村の若い男たちは
傭兵として雇われ
見知らぬ国で

みな戦死した

魚はいりませんか
新鮮な魚を買うてください

華奢なからだで
前髪を揺らしながら
女は村じゅうの家をまわり
呼びかけた

重い籠を両端に
括り付けた天秤棒は
女が歩くと
しなるほどだった

たいそう美しい娘で
頬はバラ色に染まり
眸は榛色に輝いていた

魚はいりませんか
新鮮な魚を買うてください
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