第70話
文字数 565文字
ときどき頭に浮かぶイメージが、自分のかつて見た夢なのか、映画だったのか、あるいは小説なのか錯綜してしまってわからないことがよくある。
なんかそれらは、常に甘美な思い出というか、くすぐったいような感覚をともなって眼前に起ち現れてくる。でも、むろんそれは鮮明なイメージとして甦ってくるのではない。紗がかかったような、薄いモザイクがかかったようなほんとうに曖昧な微かな香りのように、仄かに匂い立つのだった。
だから、なおさら甘美に思われるのかもしれない。見えそうで見えない遠いイメージを掴もうとすればするほど遠退いてゆく。近づいてきたかと思うとまたすぐに、するりと身をかわして逃れて行ってしまう。
そして、それよりも更に曖昧で甘美な思い出がふわりと舞い降りてくることがある。
それは、イメージですらなくその輪郭さえつかめない、ただの記憶なのだ。だが、確かな記憶の戸籍として鮮明に甦り、脳のある部分(記憶中枢?)を占有して再生が試みられるものの、そこには記憶のコアらしきものがあっても所詮コードであって、ボクにはとうてい読み取れるものではない。
なにかとっても優しい心温まるような、というか、とってもウキウキするような、胸がちくちく痛むような、そんな恋の訪れの予感みたいな本当に甘美な記憶として、その記憶の形骸だけが心に降りてくる。
なんかそれらは、常に甘美な思い出というか、くすぐったいような感覚をともなって眼前に起ち現れてくる。でも、むろんそれは鮮明なイメージとして甦ってくるのではない。紗がかかったような、薄いモザイクがかかったようなほんとうに曖昧な微かな香りのように、仄かに匂い立つのだった。
だから、なおさら甘美に思われるのかもしれない。見えそうで見えない遠いイメージを掴もうとすればするほど遠退いてゆく。近づいてきたかと思うとまたすぐに、するりと身をかわして逃れて行ってしまう。
そして、それよりも更に曖昧で甘美な思い出がふわりと舞い降りてくることがある。
それは、イメージですらなくその輪郭さえつかめない、ただの記憶なのだ。だが、確かな記憶の戸籍として鮮明に甦り、脳のある部分(記憶中枢?)を占有して再生が試みられるものの、そこには記憶のコアらしきものがあっても所詮コードであって、ボクにはとうてい読み取れるものではない。
なにかとっても優しい心温まるような、というか、とってもウキウキするような、胸がちくちく痛むような、そんな恋の訪れの予感みたいな本当に甘美な記憶として、その記憶の形骸だけが心に降りてくる。