第27話

文字数 332文字

マイルスのペットの音が
部屋のなかをゆっくりと
たゆたいはじめる

静寂
 
心のなかが澄み清まっていく
フラグメントがじょじょに
像を結んでゆく

窓枠に縁取られた
萌える若葉が音もなく
揺れている

マキといることも忘れ
一心にそれを見つめ続ける

無音の世界

そうしていつしか
身を切るような切ない調べ
陽炎のようにゆらゆらと
立ち現われる

『blue in green』

この曲がこの世にある
すべての楽曲のなかで
いちばん好きかもしれない

気の遠くなるほどの甘美な旋律

その底知れぬはかなさは
暗黒のがらん洞のなかで生まれ
虚無の深淵へとふたたび
吸い込まれてゆく

とらえようとして手を伸ばしても
どこまでも届くことはなく
引き潮のようにおごそかにひいていく
そのさだめを
とめる手立てはない

ちょうどそれは
おれとマキのように
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