ダメージの予感(1)

文字数 360文字

「お帰りなさい。」

 いつもよりやや早い帰宅だった。それでも真理沙が壁の時計を見ると22時は回っていた。そろそろ寝ようとしていたところだ。

 ここ連日の勇人の帰宅は日付をまたぐことも珍しくなかった。真理沙はほとんど眠っているかベッドに横になっているかだった。

 真理沙が寝ないで帰宅を待っているのを勇人はひどく嫌がった。新婚当初は待ってなくていいよ、とやんわりと言う位だったが、だんだん露骨に顔に出して嫌がるようになった。

 特に2人の間で勇人の浮気をめぐる諍いを何度かするうちに、真理沙が起きて勇人の帰りを待つことは一種の嫌がらせと勇人は考えるようになっていった。

 勇人は疲れた様子でろくに真理沙の方は見向きもしないでクローゼットに向かった。

 以前から会話らしい会話はない関係だが、ここ数日はまともに顔を合わせてもいなかった。
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