今年最後の雪（１）

　4人で座れる席に移動して落ち着くと門倉が口を開いた。

「で、結局坂本と宮内さんてどういうご関係なの？」

　坂本と呼ばれた男はあまり愛想が良さそうではない。というか外見は近寄りがたい感じがする。はっきり言ってちょっとコワい。

　勤務先がスーパーだと言っていたがあまり接客に向いているタイプとは言えなさそうな気がした。

　それでも親切で根は面倒見がいいからあの時も自転車を起こして運ぶ手助けをしてくれたのだろう。

「宮内さん？」

　坂本が怪訝そうな顔で門倉に問いかけながら真理沙を指差した。

「あれ？知り合いじゃないの？宮内さん。」

　門倉は真理沙の方を見て頷く仕草をした。

「宮内さん。」

　坂本は復唱するようにつぶやきながら真理沙に向かって軽く頭を下げた。

「あの時はありがとうございました。」

　真理沙も同じように頭を下げて言った。

　真理沙は不思議そうな顔をしている奈央と門倉に説明した。

「知り合いじゃなくてあの時初対面なんですよ。門倉さんと本屋さんのところで会う前に自転車が壊れてね。風が強くて。」

　真理沙は確認を求めるみたいに坂本に視線を投げかけた。坂本も同意するように頷いた。

「困ってたら坂本さん？ですか？」

　真理沙が確認した。

「はい。坂本です。」

「坂本さんが自転車が起こすのを手伝ってくれたの。チェーンも外れてたから自転車屋さんまで運んでくれて。助かりました。」