浮気男(2)
文字数 575文字
プライド。
もちろんプライドはあった。
でもそんなのはどうでもいいと思えるほど焦りもし、悩みもした。
離れていく勇人の心に耐えられず泣きすがったこともある。どうして抱いてくれないのと。
そうすれば勇人は抱いてくれた。
そう。観念して。仕方なしに。
でもそんなセックスがお互いいいわけはなかった。おざなりのセックス。
そんなセックスで真理沙だって満足出来なかった。夢中になれずいけなかったから。
それでもどんな形でもいいから勇人とつながっていたかった。
次第に真理沙は自分が壊れていくような気がした。
真理沙は鏡を見ながら古傷がじくじくと疼きだすのを感じていた。
遥か昔から慣れきった痛み。
勇人は周期的に浮気した。
この15年以上の間に何回も。
勇人が浮気をしている時はわかった。何となく。勘で。
別れようと思ったことも無いわけではない。でも踏み切れなかった。理由は上手く説明出来ない。経済的な自信も無いし直人もいたから。
それにどこかでまだ勇人に執着している自分を感じる時期もあった。
今となればもうどうでもよく思えてくる。でも今更一人になる勇気が無い。家族があっても一人のようなものだけれど。
風呂上がりに髪を乾かしながら真理沙はそんなことを思った。
今日も勇人は遅い。また始まった・・・
真理沙は勇人の悪癖が始まったに違いないと確信していた。