あの人は私のもの(3)

文字数 502文字

「いいなぁ。松本さんは彼氏いて。」

 愛美が心底羨ましそうに言った。

「どんな人ですか?芸能人だと誰みたい?」

「さあ。誰だろう?あまり誰にも似てないよ。」

 最近、柾生のことを男として意識したことはない。もちろん一緒に暮らしているし時にはセックスだってする。

 時には?

 そう。時には、だ。
 でも・・・この前いつしたのか思い出せない。

 まだ若い女だしもちろん性欲がないわけではない。生理の関係とかですごくしたい時だってある。
 でもそんな時でも別に柾生とセックスしたいわけではない。ただ男が欲しいだけだ。

 同棲を始めたばかりの頃はほとんど毎日体に触れ合っていた。四六時中、欲しいと思えば、いや莉乃が思わなくても柾生が思えばすぐにキスが始まった。

 自分で自分の目が欲情に潤むのがわかった。そんなことを思い出していた莉乃は急に我に返った。頬から耳がカッと熱くなった。

「松本さん、真っ赤になってる。かっわいいー!」

 愛美に冷やかされて莉乃はますます顔が火照った。まさか変なことを考えてたらのぼせたなんて言えない。

「彼のこと考えてたんですか?ぼーっとしてましたよ。」

 梨央にまで言われた。

「ちょっと。ほかのこと考えてた。」
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