守るべきもの(2)

文字数 504文字

 麗香を起こさないように卓哉は別のソファーに座った。会議後の着信履歴を見た時から怒涛の展開に頭がついていかなかった。

 卓哉と麗香は破綻しているというほどではないがぎくしゃくしていた。

 何より一緒にいる時間が少なかった。麗香と卓哉は元は同じ職場だったが結婚を機に麗香は本社に異動した。

 通勤は近くなったとはいえ残業も多く、2人とも帰宅は遅かったから外食も多かった。

 それに・・・

 麗香の前任者だったその男のことは卓哉も知っていた。その男、石崎と麗香の関係も噂で聞いていた。

 同僚の中には麗香が今のポジションを得たのはその男の力添えだと噂する者もいた。

 卓哉はそんな噂を知っていたが白紙で見るようにしていた。麗香は仕事が速く、正確で何よりミスが無かった。

 実際に一生に働いている人間は誰しも彼女の有能さに脱帽した。だからそんな噂で彼女は損をしていたと言える。

 そして麗香はとても綺麗だった。そのキラキラした瞳からは聡明さが溢れ出ていた。少し勝気に見える表情も人を惹きつける不思議な魅力があった。

 もっとも麗香は男性に人気があったから同性から冷ややかに見られていたとも言える。まして石崎との噂もあったら尚更だろう。




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