彼らが抱える共通の事情

文字数 415文字

 険悪な雰囲気から逃げ出すこともできない以上、割って入るしかない。
データ、メール添付できないのが痛いな。
グループ5人、揃いも揃ってネットが自由にならないとはね。
 井原が自分でレポートを打っても、実験グループの誰ひとりとしてプリントアウトできないのだった。
4人でやって出来るか出来ないかだってのに、井原1人で間に合うわけないだろ、だいたい。
正確には3人……ね。
パソコン自体、自由にならないし。
 それでも家で打ってくるってのは正解だ、やらないよりマシだよ。

 普通に考えれば、いじましいまでの努力というべきだ。それのなのに、どうも多賀にかかると時間のムダのようにしか聞こえなくなる。

 僕は話を少しでもポジティブな方へ向けようとして、ムリに明るく言った。

ヒヤヒヤしたけどな、何打ってるか聞かれるんじゃないかって。
 だが、奏野は僕たちがやっている人助けの危うさ、というかヤバさを思いっきり口にしてくれた。
偽造が親からバレんとも限らんしな。
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登場人物紹介

遠田勝昭(とおだ かつあき)


自他ともに認める高校2年の優等生。内気でシニカルな割に、感情に任せて突拍子もない行動を取ることがある。ちょっとムッツリスケベ。

奏野弓(そうのゆみ)


 一見クールだが、脳に回る栄養までプロポーションに吸い取られた感のある高2女子。ワープロ操作が異様に早い情報処理部部長。正義感は強いが責任は取らないクラスの裏ボス。

多賀久平(たが きゅうへい)


 思考もスタイルもスマートな高校2年男子。合理主義者で必要なことしか言わないし、やらないが、仕事は早い。女性への観察も鋭いが、そっち方面はストイック。

井原佐紀(いはら さき)


 小柄で、実験中でも時々いるのかいないのか分からなくなるくらい物静かな高校2年の女の子。几帳面な化学部部長。頭は切れるがそれを表には出さず、困っている人を人知れずフォローするのに生かす、心優しく奥ゆかしい少女。

風間邦衛(かざま くにえ)


 人はいいが動作もカンも鈍い巨漢。高校2年生。訥弁でコミュニケーション能力に乏しく、付き合うには忍耐を必要とする。

新島真由(にいしま まゆ)


スタイル抜群で顔も可愛い高校2年生女子。性格のねじ曲がった女子グループのボス。自分以上に可愛く、男子にモテる女子をいびるためなら、肉体的・精神的にどれほどの労力も厭わないサディスト。

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