そして僕…見てはいけないものに目が
文字数 593文字
多賀は淡々と、しかし的確に、奏野にとって痛いポイントを次々に突いていく。
今日がチャンスなんだよ、期末考査終わって、生徒みんな帰っちゃったから。
バレたら一巻の終わりだよ、このパソコン。巡回のセンセイに見られたら。
ここのカギ借りたとき、成績処理の会議行くとこだった。
いつになく小さくなっていた奏野は、作業の手を止めることこそなかったが、そこでやっと安堵のため息をついた。
それが妙に色っぽくて、僕は慌ててパソコンのキーを叩いた。
もちろん、誰も気づいてはいないけど。
タイムリミットを確認した奏野は、俄然やる気を出した。タイピングの勢いは、武者震いにも衰えることがない。
むしろ、僕のほうが背を曲げてキーボードにかじりつき、作業の手を遅らせる羽目になった。
奏野が身体を揺すった勢いで、意外にある胸が揺れたのだ。それに気付いたうしろめたさで、そっちがまともに見られなくなった。
多賀のほうはというと、同じものを見ていたはずだけど、こっちは平然としたものだ。
多賀がひたすら締切を気にしているのに対して、奏野はあくまでも部の存廃を基準にものを考える。どっちもどっちだ。持って生まれた性分は、そうそうどうにかなるもんじゃない。
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