悪女接近
文字数 607文字
井原に集団で嫌がらせしてるの、新島真由の女子グループだろ？
化学のノート隠したの、絶対、あの女だ。
話はようやく軌道に戻った。僕は怒りに任せて、いちばん肝心な話を続ける。
びっしり細かく書いたノート、あんなことされなきゃ、井原も学校来ただろうし、レポート出せただろうし……。
2人の仲間が戦闘態勢に入った。多賀の分析と、奏野の女のカンが冴えわたる。
新島がボスやってられるのは、男子を引っかけやすい見映えだけが理由じゃない。証拠隠しと言い訳が上手いからだ。
生徒指導の先生が叱っても空振りだからな。僕らが言って聞くわけがない。
バレてまずいと思ったら独りで徹底的にやるんだよ、あいつ。
多賀が皮肉っぽくため息をついた。確かに、隠し事をしているのは、僕たちも同じことだ。
謀は密なるを尊ぶってやつだな。
ハカリはもういいんだよ。
どうも奏野は、動物的カンだけで生きている感がある。また軌道修正だ。
でも、こっちの計画は知らないはずだろ？ 先生にバレたらバレたで、僕たちが事情を話せば新島がやったことだって……。
それができるんならもうアタシがやってる。
じゃあ、何で？
やればいいのだ。同じ女子なんだし、情報処理部の部長なら、先生にもそこそこ信頼はあるはずだ。
じゃあ、何でお前はそれやらなかった？
質問を質問で返してきた。議論としてはアンフェアなやり方だけど、奏野だから仕方が無い。だいたい、僕もそう聞かれて答えられる立場じゃないのだ。
