悪女・対・眼鏡ボス女
文字数 865文字
つい、背を屈めて引き戸に歩み寄ってしまった僕は、窓の下にしゃがみこんだ。
安心した僕の口からは、ぼやきが漏れ出た。
まともな神経を持った男なら、いくら可愛くても相手にしないタイプだ。
多賀は多賀で、僕が疑問を抱いた点を、別の角度から分析してみせる。
奏野でさえどうにもならない相手を痛めつけられる女子がいるんなら、味方に引っ張り込みたいくらいだ。
だが、多賀は具体的な答えを返さなかった。
やっぱり、女子の人間関係って怖い。
そこで思い出したのは、井原のことだ。
化学の実験のとき、目の前で見せるあの笑顔……。
ちょっとムキになって打ち消す。
ズキン、と胸にきた。
知らなかった……ライバルがそんなに多いとは。
真っ先に思い出したのは風間のことだったが、すぐに競り合うリストから除外する。ランキング外だ。
むしろ問題は、敵の多さを知っている多賀だった。
自覚があるんだろうか、男として。
パソコン画面から目を離さずに即答する。
本当だと信じたかった。