意外な秘密
文字数 536文字
機材撤収に大わらわの情報処理部員たちに肘で押しのけられながら、風間がのそのそと現れた。
唖然とする奏野は、目で指図を求める部員たちにかける言葉もない。
我に返ってとりあえずの生返事をすると、部員たちは機材を抱えたり支え合ったりして、自習室の外へと運んでいく。
それを無言でじっと見つめていた井原は、やがて向き直ると、僕の顔をじっと見つめる。
自分とどう関わっているのか、たぶん気づいたんだろう。ありがとうと言わないのは、恩を感じていないからじゃない。
言葉にすると消えてしまうものがある。
井原は、それをよく知っているのだ。
でも、僕が曖昧に答えた理由は違う。
風間が井原と一緒に帰ろうとしたからだ。