悪女登場
文字数 660文字
珍しく感情を爆発させた多賀の息は荒かった。さすがに我に返って素直に謝ったが、おかげで、もう1人の声の主が戻ってきたのに気付けなかった。
僕たちが普通じゃないのだ。こうやって自習室で人のレポート偽造してるところが。
だから、大声出したら一発で怪しまれる。
奏野も多賀も僕も。
その前半は、僕たちも本来ならそうしているはずのことだ。年中無休の野球部ですら、グラウンドにいないのだから。
後半は……。
多賀の地獄耳というか広域アンテナというか、とにかく情報収集能力には驚かされる。
起きてるのか寝てるのかよく分からない顔して、よくもまあ……。
声が低いだけに、よけいにリアリティがあった。身体が引き締まる。
緊張と、怒りと……。