悪女についての男子トーク
文字数 608文字
逸れた話題を多賀はうまくまとめたが、そうなったらそうなったで、僕は自分の問題を向き合わないわけにはいかなくなった。
井原を救えなかった奏野を、僕は責められない。
本人がいなくなったのをいいことに、多賀に聞いてみた。
やっぱり知っていた。今度はそれをいいことに、多賀には関係ないことを言い訳する。
……自分に対する言い訳だった。
まったくの正論だった。返す言葉もない。そこが僕の心のわだかまりだったからだ。
そこへ、ありがたいといっては何だが、近づいてくる新島の姿が引き戸の窓の向こうに見えた。
気になって、ちらっと振り向いてみる。
そろそろ暗くなってきた廊下で、奏野の後ろ姿が、新島の影に重なった。
何か話しているらしい……。