遅れてきた者
文字数 506文字
そこで足止めを食わせてくれたのは、巡回の先生だった。
えっほ、えっほ……んん～？
僕と奏野を見るなり、不審げに眉根を寄せる。
仕方がない。自習室に入ってから、予定の1時間をオーバーしている。
あ、もう帰ります……。
みなまで言い終わらないうちに、頭からいきなりの怒声が降ってくる。
お前ら、2人で何してた！……奏野、お前、情報処理部の部長だろ！
はい、今日は、その……。
口ごもるのも無理はない。
いくら人助けとはいえ、部活の備品を私用で自習室に持ち込んで他人のレポートを偽造していたのだから。
でも、奏野は間違ってない。
すみません、他の人が先に帰ったんです……先生が遅れていらっしゃる前に。
決心の割には、我ながら情けない言い訳だった。
だが、先生は痛いところを突かれたらしい。身体を屈めて、僕を拝むように言った。
悪い！ ……ほら、日が暮れる前にさっさと帰れ。
いったん謝ってしまうと、照れ隠しだろうか、物言いは余計に横柄になった。だが、脛に傷持つ奏野は、急に矛先を向けられてたじろいだ。
あ、あ、じゃあ、カギ御願いします……。
不純異性交遊の疑いがなんとかうやむやになったところで、僕たちは自習室の外へと飛び出した。
