意外な井原のリアクション
文字数 558文字
そうは言ったけど、本当はうれしかった。そんなにまで、井原は僕を見ていてくれたのだ。もっとも、この気持ちが伝わるほど井原と親しいわけじゃないんだけど。
つい、意地の悪い質問をしてしまった。僕に気を遣いながら、必死でその場を取り繕おうとする様子があんまり可愛いかったからだ。
すぐじゃないけど、そんなに難しいことじゃない。でも、その買いかぶりはうれしかった。まるで、僕には不可能など関係ないみたいだった。
真面目な気持ちで、井原の目をじっと見つめる。それに気おされたのか、視線がうつむき加減に逸らされた。
もしかしたら、本当は分かっているかもしれない。僕はその場からは一歩も動けないくらい緊張していたけど、気持ちの上では一歩だけ踏み出していた。
そう言いながら、井原が息を呑んだのが分かった。