大きな足枷の抱えた事情
文字数 817文字
だが、事情が事情だった。
声の勢いにつられてか、ただでさえ速い奏野のキータッチがさらに加速して、その音の切れ目さえも分からなくなる。
一旦それに押されてしまうと、当たり前のことでもなんだか言い訳っぽくなった。
こっちのほうはというと、どっちを気にしてるのか分からない。ひたすらディスプレイを見つめてキーを叩き続ける。感情は表に出さず、今しなければならないことだけを確実にこなしていた。
むしろ、感情に火が付いたのは奏野のほうだった。
家へ取りに帰って、そのまま学校に戻らなかったということだ。奏野が怒るのも当然といえば当然だが、多賀は気にもしていないようだった。
こっちはこっちで、当然といえば当然のことを突っついてくる。