悪女の脅威
文字数 614文字
多賀のほうは冷静なものだった。奏野も事実だけを簡潔に答える。
多賀が再び声を荒らげた。どうやら、自分にも迫る危機には敏感に反応するらしい。
僕の言い訳に対して帰って来たのは、避難ではなく、冷静な状況分析だった。
それは、学校側に誇張して伝えられるということだ。その場合、悪の烙印を押された僕たちに、弁明の余地はない。
二人の話を引き取る形で責任をうやむやにした僕を責める余裕など、奏野にはなかったらしい。憎々し気に吐き捨てる相手は、僕ではなかった。
奏野の唸り声が、僕の中に渦巻いていた感情に火を点ける。
多賀も同じ思いだったようだが、一言多かった。奏野がピクリと反応する。
この状況下にあって強い言葉で迫る辺り、それなりに自意識はあるらしい。とりあえず、止めに入るのが僕の役割のようだった。