窓のそばでの暴走
文字数 546文字
奏野のしなやかな指からは想像もつかない力で掴まれた手首が、ちぎれそうに痛い。いや、それを通り越して、もう感覚がなくなっていた。
そのせいだろうか、はやる気持ちの割に、頭は冷えていた。
どっちかといえば、開き直りだった。さっき通っていった新島の身長と比べると、プレハブの体育倉庫は大人の男が何とかよじ登れそうなくらいの高さだった。
それを差っ引いても、かなりの距離を落下することになる。
だが、足からちゃんと落ちれば死ぬことだけはない……たぶん。
構わない。それで井原が助かるんなら。後のことは後で考えたらいい。