意外な一言
文字数 423文字
怯えたように一歩退いていた井原が、恐る恐る尋ねた。
奏野は答えない。
撤収の指図に余念がないが、自分はというと、豊かな胸の下で腕組みしたまま、何もしない。
代わりに多賀が聞き返した。
一分一秒を争う撤収作業の最中とはいえ、これは聞き流せなかったらしい。
井原ひとりの戦いだったのだ。心の中にしまっておく権利も、井原ひとりにある。
でも、そこでその井原が、意外な一言を口にした。
その井原を救うために、全ての生徒が帰ってしまった学校で、午後いっぱい自習室に詰めていた僕たち3人は、同時に絶句した。
部屋いっぱいに飛び交う「?」マーク……。