窓の下の突破口
文字数 739文字
思わず声を立てた僕の口を、奏野が横から塞いだ。
まだ新島の後ろ姿が見えていたけど、そんなこと構っている暇はなかった。
聞きながらも、多賀の手は止まらない。
多賀は納得したようだったが、それでも立ち上がることはない。奏野も、僕をパソコンに引き戻そうとする。
いつの間にか、新島の姿は消えていた。でも、そんなこと気にしていられない。
泣き叫びそうなのをようやく抑えて主張する僕を、とりあえず黙らせようとでも思ったんだろう。多賀がようやく話に応じた。
静かな口調でたしなめる多賀の眼を見据えて、きっぱりと告げる。
多賀はため息ひとつ、ようやく僕の言い分を認めた。
皮肉たっぷりな物言いにはカチンと来たが、一刻も早くやることができた。
だが、奏野は僕の手を離さない。
キーボードを叩きながら、半分は奏野に、半分は僕に言っている。
まとめると、「時間と労力のムダだ」と言っているのだ。
確信を持って言い返す僕に、多賀は根本的な問題を冷ややかに突きつけた。