意外な主役
文字数 478文字
奏野の反応は早かった。
眼鏡の奥で目をぱちぱち瞬かせながら、驚きの中にもようやく見つけ出した、つたない言葉で尋ねる。
風間の答えも、似たようなものだった。
ようやくのことで、僕はわずかに口を開くことができた。でも、言葉にはならない。
僕の心の中の結論は、奏野が代わりに多賀へと告げてくれた。返ってきたのは、この一言だけだ。
もっとも、それが聞こえたときには、多賀はもう消えている。
どうするもこうするも、どうしようもない。僕は帰り支度を始めた。
奏野が一息、大きく深呼吸して聞いてきた。
冬は終わったのだ。井原についてこれ以上どうこう言うのは、僕のプライドが許さない。