第14話 私の服はどこ?

文字数 1,291文字

 目覚めた真白は柔らかい布の感触を感じた。真白は起き上がり、辺りを見回す。薄いベールのようなピンクの絹のカーテンに仕切られた布団に真白は寝かされていた。いや、床からこの布団は高いところにある。

──ベッドというのかしら。

 大陸では、床から一段高いところに布団を敷いて寝るらしい。鏡のように真白の姿を写すきれいな木で出来た床、不思議な模様が描かれたオレンジ色の壁。見たこともない部屋の風景に真白は辺りを見回している。そしてベッドに手をつく。

──なんて柔らかいの!

 自身が寝ているベッドが柔らかいことに気付き、真白はうつ伏せになって、顔をベッドにこすりつけた。そしてふと、自分の腕を見る。二の腕にまとっていた衣がない。

「えっ?」

 肩を抱くも触れるのはやはり、自分の素肌。慌てて真白は再び上半身を起こすと自分の体を見た。

「なに、これ?」

 白色の衣を確かに着ている。だがそれは真白の国のものではなく、大陸から伝わる中華風とよばれるものでもなかった。胸元がざっくりあき、肩も露出している。まだないくびれを締め付ける白色の衣は腰の部分にある深い赤のリボンで仕切られ、ふんわりと広がっていて足首まであった。よく見たら腰から下は鈴蘭などの白い刺繍が入った布とツルツルの絹で出来た布の二重になっていた。

──胸がなくてよかった。

 ぺたんこの胸を露出したところで、山もなければ谷間もできない。真白が胸を抱き締めるとツルツルの絹で出来た布の感触が、狩衣やら袴を着ている真白には奇妙に感じてしまう。

「気に入ってくれた?」

 そこへ見知った声が響く。りゅかに声をかけられ、真白は振り向いた。足元、ピンクの薄い布越しに立っているりゅかが見える。

「いや、見ないで」

 しかし、真白は自身にかけてあった布団を肩まで隠すように抱きしめる。着物文化の真白にとってこんな露出の多い服は着たことがなかったのだ。

「真白、きれいだから大丈夫だよ」

 だが真白の反応を見てもやけに落ち着いているりゅか。心配しないでと天使のように微笑みながらも、さり気無く真白をほめることを忘れない。

──りゅかって十二歳なんだよね。

 生前の年齢のままのりゅかは真白と同じようにかなり小柄で十歳くらいに見えてしまうが、確か十二歳。
──待てよ。私が生まれたときから十二歳だから二十四歳!?
 悲しいことに真白もまた小さいし、女の子なのか男の子なのかわからない体型をしているが十二歳。ということはりゅかが生きている?年数は二十四年。立派な大人になっている。

「この服何? なんでこんなところにいるの?」

 真白は泣きそうだ。相変わらず布団を握りしめたまま、りゅかを涙目で見つめた。

「ドレスっていうんだよ。僕の世界の民族衣装だから安心して。それに、ここを案内しながら説明したいから早くでておいで」

 りゅかはにこにこしたまま質問に答える。変な意味はないのだと告げるりゅか。

「りゅか、嫌だよ!」

 真白は涙目で訴えた。しかしりゅかは、いつものようにこにこしているだけだった。 
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登場人物紹介

武黒~ぶこく~

真白の兄。職業は侍(サムライ)。

身長187cmの大柄な男性。剣術の使い手。

性格は乱暴だが良い兄であり、仲間思い。国内最強の侍のはずなのに、なぜか月佳姫にだけは逆らえない。

真白~ましろ~

白い龍の化身であり巫女。

身長130cmの12歳。普段は巫女袴や狩衣を着ている。

兄は2m近くあるのにも関わらず、なぜか伸びない身長に悩んでいる。

異世界でドレスを着せてもらったら、本当に歩くお人形さんみたいになってしまい、ポピーと魔女さんの着せ替えごっこに付き合わされている。

りゅか

実は当代随一の巫女を凌ぐ実力だった真白のお師匠さま。自称幽霊。本来、まだ死ぬ運命ではなかったらしいが…。

身長135cm。

月佳姫~げっかひめ~

当代随一の巫女。おっとりした女性。武黒の幼なじみ。

酒・賭博・喧嘩な武黒に時には苦言を呈することも。怒らせると怖い。実は武黒達のために厳しい修行に耐え、当代随一と呼ばれるほどの実力者になった努力家。

魔女さん

妖艶な謎の女性。どの世界にも属さない狭間と呼ばれる世界に住んでいる。普段は狭間にある荒野の洋館にポピーと二人暮らし。りゅかと仲が良いようだけど…。お酒と本が好きな美女。

蘭丸~らんまる~

東見(あずまみ)の領地の次男。武黒達の幼なじみ。武術に秀でている。弓と剣術の腕はなかなかのもの。ちなみに身長183cm。

困った兄弟達に悩まされている。

藍炎~らんえん~

東見(あずまみ)の領主。蘭丸の兄。

物腰はやわらかいのだが、女性好きであり、実際、よくモテている。

かなりの酒豪でザルを越えてワク。


陵王~りょうおう~

東見の長女。藍炎と蘭丸の姉。

剣術に優れる。無類の酒好き。

残念な美女。

ポピー

魔法のローブをかぶっているが、おそらく身長は真白と変わらないくらいだろう。魔女さんと二人暮らし。ちなみに身長はローブをいれて135cm

文太~ぶんた~

真白のお友達。術者見習い。

奥美(おうび)の巫女

故人。真白たちの母。

黒い龍

狭間に棲む黒い龍。烏に似た翼が生えている。怨念に近い想いを抱いて奥美の村を襲いはじめるが…。人間を襲う理由は食べるためなのか、恨んでいるのかは不明。真白が救いたいと願った人でもある。

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