第10話 妖艶な美女

文字数 482文字

「月佳姫と、この兄妹に悟られないで連れてくるなんて隅におけない男ね。りゅか」

 女性は豪華な金の装飾で縁取られた赤い椅子で頬づえをつきながら嗤う。黒い髪と黒い瞳をしているが、どこか異国風の深紅の着物を身に纏った女性。絹で出来た赤い衣からは思い切り肩をだし、胸の谷間を覗かせている。足を組んでいるせいだろうか。華奢な白い足が赤い衣からちらりとのぞかせる。

 りゅかは女性の背後にあるベッドを見つめてから女性に視線を戻した。

「いや、月佳姫はもう気付いたでしょう。それに武黒も勘がいいから大変だったよ」

 女性は微笑むと、こっちにいらっしゃいとりゅかを呼ぶ。りゅかは女性を魔女さんと呼んだ。魔女さんは人使いが荒いんだからと言いながらも女性の前に立つりゅか。

「真白に勘づかれるとは思わなかったのね?」

 魔女はそう言いながら、右手を差し出した。

「えぇ、真白は僕のことを信じてくれているから」

 りゅかは魔女の前でひざまづくと、挨拶代わりに右手の甲に軽く口づける。りゅかは背後にあるベッドに視線をやった。そこには未だに意識の戻らない真白が眠っていた。
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登場人物紹介

武黒~ぶこく~

真白の兄。職業は侍(サムライ)。

身長187cmの大柄な男性。剣術の使い手。

性格は乱暴だが良い兄であり、仲間思い。国内最強の侍のはずなのに、なぜか月佳姫にだけは逆らえない。

真白~ましろ~

白い龍の化身であり巫女。

身長130cmの12歳。普段は巫女袴や狩衣を着ている。

兄は2m近くあるのにも関わらず、なぜか伸びない身長に悩んでいる。

異世界でドレスを着せてもらったら、本当に歩くお人形さんみたいになってしまい、ポピーと魔女さんの着せ替えごっこに付き合わされている。

りゅか

実は当代随一の巫女を凌ぐ実力だった真白のお師匠さま。自称幽霊。本来、まだ死ぬ運命ではなかったらしいが…。

身長135cm。

月佳姫~げっかひめ~

当代随一の巫女。おっとりした女性。武黒の幼なじみ。

酒・賭博・喧嘩な武黒に時には苦言を呈することも。怒らせると怖い。実は武黒達のために厳しい修行に耐え、当代随一と呼ばれるほどの実力者になった努力家。

魔女さん

妖艶な謎の女性。どの世界にも属さない狭間と呼ばれる世界に住んでいる。普段は狭間にある荒野の洋館にポピーと二人暮らし。りゅかと仲が良いようだけど…。お酒と本が好きな美女。

蘭丸~らんまる~

東見(あずまみ)の領地の次男。武黒達の幼なじみ。武術に秀でている。弓と剣術の腕はなかなかのもの。ちなみに身長183cm。

困った兄弟達に悩まされている。

藍炎~らんえん~

東見(あずまみ)の領主。蘭丸の兄。

物腰はやわらかいのだが、女性好きであり、実際、よくモテている。

かなりの酒豪でザルを越えてワク。


陵王~りょうおう~

東見の長女。藍炎と蘭丸の姉。

剣術に優れる。無類の酒好き。

残念な美女。

ポピー

魔法のローブをかぶっているが、おそらく身長は真白と変わらないくらいだろう。魔女さんと二人暮らし。ちなみに身長はローブをいれて135cm

文太~ぶんた~

真白のお友達。術者見習い。

奥美(おうび)の巫女

故人。真白たちの母。

黒い龍

狭間に棲む黒い龍。烏に似た翼が生えている。怨念に近い想いを抱いて奥美の村を襲いはじめるが…。人間を襲う理由は食べるためなのか、恨んでいるのかは不明。真白が救いたいと願った人でもある。

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