第41話 襲撃
文字数 986文字
それは、地響きと共にやって来た。
あの「雪山の戦い」以来、肉体を失ったダールは、死の領土を広げ、悪意と知恵を持った存在へとふくれ上がっていた。
ダールは、準備を整え、そして、人間を憎んでいた。
稲妻の中に、影を実体化させ、黒の戦士を誕生させた。
復讐が始まったのだ。
悪魔は、まずニコの国を、その牙にかけた。
「にげろっ」
「川へ! ガダル川へ行くんだ!」
「おい、そっちじゃない。子どもを先にしろ!」
人間の土地は、混乱に支配されていた。
雷鳴が宙に走った瞬間、彼らは一瞬にして、そのことを知った。
侵入者たちは、ここを死の国・ダルギスの領土にしようとしていること。
今や完全に復活した悪魔の名は、ダールというのだということ。
自分たちは、殺される運命にあることを。
押しよせる、黒い殺人者たちの群れ。それを見た時、人間たちの眼は恐怖にそまった。やつら、黒の戦士は、ダルトーと呼ばれる……
「しまった。こんなに早く」
ネムは、自分の失敗をうらんだ。よりによって、こんな時に!
この夜。彼は、主だった者を集め、ソデクの国とアトロス王国に、危険を知らせる使者を行かせる会議をしていた。
今度こそ、やつらと決着がつけられるのか? ネムは、指示を出した。
「ミスア。わたしと一緒にクロフス王のもとへ。アトロス王国へ行ってくれ」
「レイシーズ。君は、ソデクの国ヘ頼む」
「ナクル。君はここへ残って、仲間を指揮しろ」
ダルトーが人を殺し、悲鳴がうずまく中を、彼らは出て行った。このニコの国を出るまでに、敵と戦うかもしれない。みな、剣の扱いは一流だった。
助けが必要だから、行く。このことだけが、彼らを動かしていた。
ネムはミスアをともない、西を目指す。まず、ガダル川へ。
次の日の朝。
逃げのびた人の中には、けが人もいたが、被害はそれほど多くないようだった。さきほども、二つの集団がここへ合流し、あちこちで、無事の再会を喜ぶ姿が見られた。
黒の戦士ダルトーの攻撃は、夜に限られていた。
これまで、不思議と打ちひしがれた気分はない。しかし、親をなくした子どもたちもいる。眼の前で、家族を殺された人も。
「おうい。剣を持ってるやつ、集まってくれ」
ネムに、あとのことを任されたナクルは、男たちを集めた。
これから、戦いの訓練だ。
「早くしな。こんな時こそ、役に立たなきゃ」
ナクルは、叫んだ。
あの「雪山の戦い」以来、肉体を失ったダールは、死の領土を広げ、悪意と知恵を持った存在へとふくれ上がっていた。
ダールは、準備を整え、そして、人間を憎んでいた。
稲妻の中に、影を実体化させ、黒の戦士を誕生させた。
復讐が始まったのだ。
悪魔は、まずニコの国を、その牙にかけた。
「にげろっ」
「川へ! ガダル川へ行くんだ!」
「おい、そっちじゃない。子どもを先にしろ!」
人間の土地は、混乱に支配されていた。
雷鳴が宙に走った瞬間、彼らは一瞬にして、そのことを知った。
侵入者たちは、ここを死の国・ダルギスの領土にしようとしていること。
今や完全に復活した悪魔の名は、ダールというのだということ。
自分たちは、殺される運命にあることを。
押しよせる、黒い殺人者たちの群れ。それを見た時、人間たちの眼は恐怖にそまった。やつら、黒の戦士は、ダルトーと呼ばれる……
「しまった。こんなに早く」
ネムは、自分の失敗をうらんだ。よりによって、こんな時に!
この夜。彼は、主だった者を集め、ソデクの国とアトロス王国に、危険を知らせる使者を行かせる会議をしていた。
今度こそ、やつらと決着がつけられるのか? ネムは、指示を出した。
「ミスア。わたしと一緒にクロフス王のもとへ。アトロス王国へ行ってくれ」
「レイシーズ。君は、ソデクの国ヘ頼む」
「ナクル。君はここへ残って、仲間を指揮しろ」
ダルトーが人を殺し、悲鳴がうずまく中を、彼らは出て行った。このニコの国を出るまでに、敵と戦うかもしれない。みな、剣の扱いは一流だった。
助けが必要だから、行く。このことだけが、彼らを動かしていた。
ネムはミスアをともない、西を目指す。まず、ガダル川へ。
次の日の朝。
逃げのびた人の中には、けが人もいたが、被害はそれほど多くないようだった。さきほども、二つの集団がここへ合流し、あちこちで、無事の再会を喜ぶ姿が見られた。
黒の戦士ダルトーの攻撃は、夜に限られていた。
これまで、不思議と打ちひしがれた気分はない。しかし、親をなくした子どもたちもいる。眼の前で、家族を殺された人も。
「おうい。剣を持ってるやつ、集まってくれ」
ネムに、あとのことを任されたナクルは、男たちを集めた。
これから、戦いの訓練だ。
「早くしな。こんな時こそ、役に立たなきゃ」
ナクルは、叫んだ。