第15話 塔をのぼって
文字数 1,592文字
その次の日。
日はもう高く、リダンは起きると、目の前の塔を見上げた。天につきささるようにそびえる、とがった石の塔だった。
「大きな友だちみたいだな」
そう思って、塔の壁をトントンとたたいた。
中では、また声がする。
「あのちびさん、やっと起きたよ。おねぼうめ。でもさ、これで、おれたちも助かったってもんだ。な、そうだろ」
「いやいや。まだこれからじゃよ」
「早く入ってくりゃいいのによ。なにウロウロしてるんだ」
「まあ、せくなて。おや、入口を見つけたようじゃ」
「ここだな、入口」
リダンが一歩中に入ると、真っ暗だった。道のようなものが奥へ続いていて、外の光を受けてキラキラしている。
——水が流れているのかな?
リダンは静かに進む。それは、水ではなかった。磨かれた石の面が光っていたのだ。その石の道を歩いて行くと、やがて上り坂になった。まわりは暗やみだったが、こわくはない。
さらに、のぼっていくと……
うおおん。とすごい声がして、空気がふるえた。リダンは、つま先立ったまま、顔が青くなってしまった。
でも勇気をふりしぼって、
「だれかいるか」
とどなり返した。
「はやくこい」
とすぐ返事があった。
リダンは、まだふるえていたが、その声のする方へ進んだ。ここまで来て、会わずにもどることはできない。
すると、足も軽くなった。
かなりのぼると、道が急にとぎれた。
「おっと、気をつけな。そこから落ちたら大変だ」
前を見ると、光が外から差し込んでいて、何かが動くのが見えた。下を見ると、暗くて見えない。入口まで、吹き抜けのようだ。
そこは、道がとぎれた小さな広場になっていた。
「ようこそ。あなたは、ここの最初のお客さんじゃよ」
それが、歓迎のあいさつだった。
リダンの前の方で、四つの光がぎょろりとした。それは、声の主の目。四つ目の生き物なんて!
その大きなものが、こちらへ向かって来る。
リダンは、後ろへ下がりながら、逃げられないとわかっていた。相手が、腕をのばしてきた。
恐怖がこみ上げてきた。その毛むくじゃらの手につかまれて、胸がどうにかなりそうだった。何とか頭を働かせようとしたが、だめだった。
彼は、気を失ってしまった。
「おおや。おめざめかい。ま、起きなくていい。横になってなさい」
「ぼくは……」
「気絶したのさ。寝たり起きたりいそがしいな、ハッハッハ」
「おい。そんな大声はよせ」
リダンは初めて、落ち着いて相手をながめた。暗くて上の方しか見えないが、それは怪物だった。全身毛むくじゃらで、指にはカギ爪が、そして、頭が二つある。それで、目が四つに見えたのだ。顔は両方とも口が裂け、牙がのぞいている。その二つの頭は、話に聞く大昔の動物にそっくりだった。背の高さは、こちらの十倍以上もあるようだ。
「おどかしてすまなかった。あんたを、もっと近くで見ようと思うてね」
「でも、気を失うとは。もう大丈夫かい?」
「ええ、もう。ところで、あなたはルウィンではありませんね」
「あんたたち小びとは、自分のことをルウィンと呼ぶのかい?」
「ええ」
「いかにも。おれたちゃルウィンじゃない」
「じゃあ、何です。それに、ここは何という所ですか?」
「ここは、ハラルドの塔じゃよ。あんたが発見者だ。わしたちは、第三季の始めのころからここにいる」
「そんなに古くから。へえ。じゃ、今が第三季の終わりというのは、本当ですか?」
「かもしれん。あんたは、第二の旅行者かい?」
「旅行者を知ってるんですか! それなら」
リダンは、びっくりした。彼らなら、あの手紙の謎がわかるかもしれない。荷物をかき回して、手紙を出そうとした時、びくんとして、手が止まった。
手紙の16行目、「二つを一つ」というのがひらめいたのだ。
「あなたたちは、もしかして……」
「気がついたようじゃな」
「 ”キーゴン”、ですか」
「そのとおり!」
怪物は、口をそろえてさけんだ。
日はもう高く、リダンは起きると、目の前の塔を見上げた。天につきささるようにそびえる、とがった石の塔だった。
「大きな友だちみたいだな」
そう思って、塔の壁をトントンとたたいた。
中では、また声がする。
「あのちびさん、やっと起きたよ。おねぼうめ。でもさ、これで、おれたちも助かったってもんだ。な、そうだろ」
「いやいや。まだこれからじゃよ」
「早く入ってくりゃいいのによ。なにウロウロしてるんだ」
「まあ、せくなて。おや、入口を見つけたようじゃ」
「ここだな、入口」
リダンが一歩中に入ると、真っ暗だった。道のようなものが奥へ続いていて、外の光を受けてキラキラしている。
——水が流れているのかな?
リダンは静かに進む。それは、水ではなかった。磨かれた石の面が光っていたのだ。その石の道を歩いて行くと、やがて上り坂になった。まわりは暗やみだったが、こわくはない。
さらに、のぼっていくと……
うおおん。とすごい声がして、空気がふるえた。リダンは、つま先立ったまま、顔が青くなってしまった。
でも勇気をふりしぼって、
「だれかいるか」
とどなり返した。
「はやくこい」
とすぐ返事があった。
リダンは、まだふるえていたが、その声のする方へ進んだ。ここまで来て、会わずにもどることはできない。
すると、足も軽くなった。
かなりのぼると、道が急にとぎれた。
「おっと、気をつけな。そこから落ちたら大変だ」
前を見ると、光が外から差し込んでいて、何かが動くのが見えた。下を見ると、暗くて見えない。入口まで、吹き抜けのようだ。
そこは、道がとぎれた小さな広場になっていた。
「ようこそ。あなたは、ここの最初のお客さんじゃよ」
それが、歓迎のあいさつだった。
リダンの前の方で、四つの光がぎょろりとした。それは、声の主の目。四つ目の生き物なんて!
その大きなものが、こちらへ向かって来る。
リダンは、後ろへ下がりながら、逃げられないとわかっていた。相手が、腕をのばしてきた。
恐怖がこみ上げてきた。その毛むくじゃらの手につかまれて、胸がどうにかなりそうだった。何とか頭を働かせようとしたが、だめだった。
彼は、気を失ってしまった。
「おおや。おめざめかい。ま、起きなくていい。横になってなさい」
「ぼくは……」
「気絶したのさ。寝たり起きたりいそがしいな、ハッハッハ」
「おい。そんな大声はよせ」
リダンは初めて、落ち着いて相手をながめた。暗くて上の方しか見えないが、それは怪物だった。全身毛むくじゃらで、指にはカギ爪が、そして、頭が二つある。それで、目が四つに見えたのだ。顔は両方とも口が裂け、牙がのぞいている。その二つの頭は、話に聞く大昔の動物にそっくりだった。背の高さは、こちらの十倍以上もあるようだ。
「おどかしてすまなかった。あんたを、もっと近くで見ようと思うてね」
「でも、気を失うとは。もう大丈夫かい?」
「ええ、もう。ところで、あなたはルウィンではありませんね」
「あんたたち小びとは、自分のことをルウィンと呼ぶのかい?」
「ええ」
「いかにも。おれたちゃルウィンじゃない」
「じゃあ、何です。それに、ここは何という所ですか?」
「ここは、ハラルドの塔じゃよ。あんたが発見者だ。わしたちは、第三季の始めのころからここにいる」
「そんなに古くから。へえ。じゃ、今が第三季の終わりというのは、本当ですか?」
「かもしれん。あんたは、第二の旅行者かい?」
「旅行者を知ってるんですか! それなら」
リダンは、びっくりした。彼らなら、あの手紙の謎がわかるかもしれない。荷物をかき回して、手紙を出そうとした時、びくんとして、手が止まった。
手紙の16行目、「二つを一つ」というのがひらめいたのだ。
「あなたたちは、もしかして……」
「気がついたようじゃな」
「 ”キーゴン”、ですか」
「そのとおり!」
怪物は、口をそろえてさけんだ。