第67話 知らせ

文字数 666文字

 ネムとレイシーズは、ゼルを失ったことを悲しんだ。
 二人は、もう間もなく、サリュス連山を越える。
 そんなある夜、草むらで休んでいると見知らぬ人間がやってきた。
 森からの人のようだ。
 二人は、話しかけられた。
「あんたたち、ニコの国から来たんだろ」
「そうだ」
「黒の戦士が、かぎまわってる。狙われてるぞ。どこへ行くんだい」
 ナクルは答えた。
「ルーンの地へ行くんだ」
「ならもう少しだが、敵に気をつけな」
「わかった」
 その人物は、ネムの方を向くとたずねた。
「ところで、あんたはニアの息子、ネムかい」
「ああ」
「おれはウルの息子、ディウルだ」
 そう言ってディウルは手を差し出した。
「ウル? 雪山の戦いの? そうだったのか」
 ネムはディウルの手をにぎった。
 この二人の父たちは、雪山の戦いで魔物を追い、ウルが倒れ、ニアは還ったのだった。
「ネム、いいことを教えよう。黒の戦士は、火に弱い」
「本当か」
「やつらに出くわした子どもが、たいまつを投げつけたら、すぐ体が燃えて、剣もぼろぼろになったそうだ」
「それは、いい知らせだ」とレイシーズ。
「いい知らせは、まだある。今、火の矢をいっぺんに打ち出せるしかけを作ってるんだ」
「それはうれしいね」
「できたら、必ず助けにいく。森から、もう百人つれてくよ」
「ありがとう、ディウル」
「このへんの黒の戦士たちは、おれたちで適当にじゃましといてやるぜ。君らは、早く仲間の所へ戻った方がいい」
「悪いな。先に行って待ってるよ」
「ルーンの地で会おう。じゃあ」
 そう言うと、ディウルは立ち上がった。夜の中に、その姿は消えていった。
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