第27話 予感

文字数 284文字

 ある日の夕方。
 ニアは、草原で息子のネムに話しかけた。
「ネム。こんなとこで何してたんだ?」
「うん。友だちにね、いろいろ聞かれた」
「友だち? どこにもいないじゃないか」
「見えないの? ほら、あそこ」
 ネムの指さす方に、ニアは、白いかげろうを見たように思った。草むらを遠ざかる、二人の子どもの姿。ほんの一瞬だった。しかし、ニアは恐ろしい気持ちになった。
 マント姿の小人——伝説に出てくるルウィンみたいじゃないか、と思ったのだ。
 でも、すぐ考え直した。今の時代に、ルウィンなどいるはずがない。そして、人間が危機におちいった時、ルウィンは救いに現れる、と言い伝えられていた。
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