文字数 646文字

 その日、届けられた小箱。
 そこには、きれいな青色の本が一冊入っていた。
 本に添えられた手紙には、こんなことが書かれていた。
 
 森野さんへ
 
 この本は、ある国の、昔の話です。
 それがどこの国なのか、最後までお読みになれば、きっとわかることと思います。
 そしてこの物語は、ある人々にだけお贈りしています。
 どうしてその中にあなたが入っているのか、いま、お話することはできません。
 でも、そう遠くない将来、急にその意味がはっきりして、あなたは驚くかもしれません。
 それまで、お体を大切に。そしてよい人になってください。
 いつかお会いできることを楽しみにしています。
 
 手紙は、それきりだった。
 今では、私はこの本を読み終えている。
 そして、手紙には、この物語をほかの人に話すなとは書いていない。
 これから、この本を読んでさしあげよう。
 
 それは、こんなふうに始まっていた。
 
   *
 
 むかし、ロゴウスという名の神官が、古代ルーン市をおとずれた。
 ルーン市に住む
 オー、ヲー、アードという名の三人の賢人たちに会うために。
 オーは女で、ヲーとアードは男だった。
 
 ロゴウスは、ルーン市の神殿に賢人たちを呼んだ。
 彼女と彼らは、神殿へと向かった。
 
 ロゴウスは、三人の賢人たちと会い、こう告げた。
 
「オー、ヲー、アードよ。
 わたしは、そなたたちに、ある物語をさずける。
 これは、人のむかしの物語である。
 みなに、これを伝えよ」
 
 そして賢人たちは物語を伝え、広めた。
 ゆえに、ここにその物語をしるす。
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