第3話 パーティ 

文字数 1,219文字

「やあ、ラーベス。君ならきっと行くと思ってたよ。無事で何よりさ」
「ボージャー、酔ってんじゃない?」
 や、ラーベス!
 彼が戸口に現れると、みんなびっくり。さっそくお祝いが始まって、誰もがいっぱい食べた。やがてムル酒が飛んできて、みんないい気持ちだった。ラーベスも、いつもよりかなり多く飲んでしまい、酔っ払う前に眠くなってしまった。
 彼は、アノネと肩を組みながら、しばらく話をしていたが、とうの昔に眠りこんでいた。
 リークルが窓を開けると、カタカタいいながら、夜風が入って来た。
 
「ああ、いい風だ」
——そりゃ、どうも。
と、夜風が口をきいた。
「君はしゃべるけど、姿が見えないね」
——当然です。私は風ですから。
「でも、君は何で風になったんだい?」
 ラーベスの質問だった。彼は、もう目がさめていた。
——さあ、ただ私は動き回ることが好きなんです。速いのがとりえでしてね。それで、ルーンの使いもつとまるってわけです。
「ルーンて?」
——ずうっと、北の方にいて、今は木の姿をしています。ルーンの木です。
 ルーンの"木"だって?
 ラーベスの記憶の中で、コツンと当たるものがあった。
「風さん、ルーンの木っておおきいの?」
 ユティだった。
——ええ、ずいぶんとね。雲より高いほどです。ところで、ルーンは、ラーベスさんの今度の旅にも、ちょっとお手伝いしたんですよ。ええと、あなたがラーベスですね?
 ラーベスは、うなずいた。
「へえ。まあ、そんなことはどうでもいいさ。それより、何か食べてったら?」
——ありがとう、アノネさん。でも、もう帰ります。皆さん、さようなら。
「風さん。また、来てよね」
——ええ、きっと。おやすみなさい。
 夜風は帰って行った。
 ラーベスは、すると、嵐の時に見えた大きな木と、ぼくが目をさました時にあった木は、ルーンが仕組んだんだね、と思うと、心の中に、「そうです」と夜風の答が返ってきた。
 夜風は、ルウィンラーナから離れながら、ラーベスの心にメッセージを送ってきた。
——私は、あなたの無事を確かめに来たのです。いえ、大丈夫。これは、あなたにしか聞こえませんから。あなたは、旅をしましたね。手紙を見つけたはずです。その謎を早く解くことです。でも、しゃべりすぎに注意して。「あること」が起きようとしています。あなたは、一人ではありません。そして、ルーンはあなたの味方です。それだけは、信じて——。
 うすれゆく風の声を聞きながら、ラーベスは自分の心を確かめていた。
「おい! 何ぼんやりしてんだい」
 いきなりつつかれて、ラーベスはハッとした。
「つかれたのよ。寝たら」
「そうする」
 ほんとは、眠気なんか吹き飛んでいたが、そう言って、ラーベスはゆっくりと部屋を出た。真っ暗なろう下を歩きながら、彼は今すぐ図書館の館長のもとへ行って、あの飛んできた手紙の謎を解いてもらおうと思ったが、どういうわけか、ふらふらと部屋に入ると、すぐ寝てしまった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み