関口 陽(ひなた) (3)

文字数 1,034文字

「うおりゃああ〜ッ‼」
 もう何十匹目か判らなくなっている。
 ゾンビどもを蹴散らしながら、何とか、刑務所の敷地内に入る。
「あまり、『気』を使うな。力まかせにやれば良いだけなんだろ」
 背後(うしろ)から笹原(ささのはら)の声。
「わかった、わかった」
 しかし、無意識の内に手にしているハンマーに「気」を込めてしまう。そして、その結果は体力の消耗だ。
「やりにくいな……」
 どうやら、ゾンビもどき退治に駆り出された連中の中で、強化装甲服(パワードスーツ)を着てる今の私に次ぐ「防御力」を持っているのはランだったらしい。
 一見すると、単なるプロテクター付のライダースーツに思えるが、どうやら「本土」の「正義の味方」達がコスチュームに使っている素材は、とんでもなく優秀な代物のようだ。
 けど、ランは……あくまで急所を狙ったり、相手の力を逆用した戦い方が得意なようで、脳震盪を起こすような打撃技を食らっても動き続けるゾンビもどきどもが相手では……普段のバカみたいな強さを発揮出来ないようだ。
 私達は背中合わせになって、少しづつ進んでいた。
 その背後(うしろ)から私達が撃ちもらしたゾンビもどきを掃討しながら他の連中が、これまた少しづつ進んで行く。
「お前、機関銃とか持って来てない?」
「流石に無い。そっちの『自警団』には無いのか?」
「悪い。この(東京)の『自警団』は3つとも『魔法使い』系だ」
 急所を攻撃しても、大した効果は無い、と云うのは、言い換えれば、連射式ならともかく、単発の銃も、あまり効かない、って事だ。
 一応、銃は有るが……拳銃か狙撃銃がほとんどだ。大量の弾丸をバラ撒くタイプの奴は無い。
 何故かと言えば……私達「自警団」の存在意義は「自分の地区(なわばり)」の「治安維持」。
 しかも、私が所属する「自警団」は「魔法使い」系。
 普通なら機関銃を使うような局面でも「魔法」で何とかなる事が多い。
 なので、ウチの「自警団」に用意してある銃は、何かの理由で魔法が使えない場合の護身用の拳銃か、遠くから少数の「凶悪犯」を狙う為の狙撃銃か……あとは「魔法」が苦手な事である「異様に頑丈な物体を破壊する」為の対物ライフルぐらいしか……いや……待て……。
「おい……待て……良い手を思い付いた……」
 そう言ったランの声にも……微かな疲れが有った。
「ああ……私も思い付いた……。多分、同じ手だ」
 そうだ……先月末の千代田区(Site01)での騒動の時の……。
「島中の土木業者に声をかけて……ショベルカーやブルドーザーと、その運転手を有りったけ集めて」
 私は無線で、そう連絡した。
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