関口 陽(ひなた) (18)

文字数 817文字

「わかった」
 そう言うと、私は再び印を組み真言を唱え……。
 しかし、炎の中、奴は平然と近付いて来る。
「まだ、判んねえのか、このメスガキが……なら、わからせてやんよ」
「うおりゃああッ‼」
 続いて、笹原(ささのはら)が「気」を込めた錫杖で、奴を殴り付け……。
 ヤツは平然とした顔のまま……逆に……笹原(ささのはら)が、一瞬で吐きそうな顔になる。
 私達は、体に「隠形」の術をかけている。つまり……たとえ、ヤツの力が化物(チート)級でも、標的にすべき私達の「気配」を認識(とらえ)るのは困難だ。
 しかし……直接か武器を通して、奴の体に触れれば、流石に話は別だ。
 そして、今のヤツのとんでもない「気」の量なら……ヤツにとっては「ほんの少しの『気』」を使うだけで、並の人間は愚か、並の「魔法使い」の心身の「気」の状態を無茶苦茶にする事が可能だ。
 つまり、ヤツを下手に攻撃すれば……攻撃した方の体は、一瞬で、戦闘不能レベルの体調不良になる。
「うがあああッ‼」
 私は大型ハンマーを振り上げ……。
 奴は前に出て、「気」を込めた掌底を……。
「ん?」
「ん……い……(いて)え?」
「不意打ちなら、ダメージを与えられるようだな」
 いつの間にか、ヤツの背後(うしろ)に移動していたランの声……。
「て……てめえ……」
 ヤツの背中には、麻酔薬付の矢が刺さって……おい……いくらなんでも、あっけない終り……あっ……?
 ヤツ自身も、他の誰かも、矢に触れてないのに、その矢は抜け……。
 ブシュッ‼
 傷口から血が盛大に吹き出した後……。
(わり)いが……変な薬は……」
 私はハンマーを振り降す。
 だが、ヤツが一歩踏み込み……当たったのは、ハンマーの柄だけ。
 ヤツの掌底が私の腹に命中。
 私の強化装甲服(パワードスーツ)の全身に輝く経文が現われるが……一瞬で、砕け散るように消える。
 ダメージは無い。
 けど……たった一発で、私の強化装甲服(パワードスーツ)にかけられていた「防護魔法」は解呪された。
「せっかちなメスガキだな。ああ……そうだ……(わり)いが……矢の変な薬は抜かせてもらった」
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