高木　瀾（らん）　（９）

　外で戦った時よりもゾンビもどきの数は少ない。
　一体一体も、より少ない労力で倒せる。
　しかし……。
　今は２人だけ。
　しかも、いざとなれば逃げ場がいくらでも有った外に対して、通路の前後から挟撃されている。
　ゴッ‼
　ゾンビもどきの一体の鳩尾を蹴るが……疲れで攻撃の精度や威力が落ちてるらしい。
　倒れてくれないまま、そのゾンビもどきは私の足を掴もうとするが……。
「ぎひゃあああッ‼」
　防刃・防弾繊維で出来たズボンに爪を立てようとした結果、逆に爪が剥がれる。
　外に居たヤツらより、知能が有るらしい分、痛みも感じるようだ。
　脳天を大型バタフライ・ナイフの柄で殴り付け、ようやく気絶させる。
「ジリ貧だな……」
「全くだ……」
　あとどれだけ残ってるかも判らない。
　よくよく考えれば、情報が何もない状態で……戦闘に突入したのだ。
　まだ生きていられるだけ運が良いのかも……待て、何の音だ？
「うおりゃああッ‼」
「やっちまえ〜ッ‼」
　ゾンビもどきが宙を舞う。
　なお、ここで言う「宙を舞う」とは、体ごと宙を舞ってるのと、体の一部だけ宙を舞ってるのの両方のケースが有るって意味だ。
「な……なんだ？」
「お……おい、何やって……？」
　「四谷百人組」と「原宿Ｈｅａｄｓ」のメンバーがゾンビもどきを次々と倒していく。
「助けに来たぞ〜」
　関口の声……だが……何か違和感。
「おい、『魔法』を使えない奴に何やらせてる⁉」
「外に居たヤツより、ブッ倒すのは楽そ〜なんで……全員に『隠形』の術をかけてやった」
　なるほど……声の調子がいつもと違うように感じられるのは……「疲れ」のせいか。