高木　瀾（らん）　（２）

　今、私は絶対に何かの感覚が麻痺してる。
　自分でも、そう思わざるを得ない。
　最初の応援が来るまで数十分かかった。
　そして……「魔法」で助けられるかも知れないゾンビもどきの多くが死体と化すまで十数分で済んだ。
　それを見て、ほっとしている事に、自分で気付いて自己嫌悪。
　何台ものショベルカーやブルドーザーは、次々とゾンビもどき達を動かない肉塊に変貌させていった。
「ゾンビものの映画が、これで終ったら……ブーイングの嵐だな」
　関口は疲れた声でそう言っていた。
「あのな……何、呑気な事を言ってんだ？」
　そう言ったのは、「寛永寺僧伽」の笹原(ささのはら)とか言う、私達の「御目付け役」。
「えっ？」
「民間人の力を借りて、事態を収拾出来たんなら……『自警団(わたしら)』の存在意義って何だ？」
「あっ……」
「それはいいけど、『異界の門』とやらは……？」
　私は２人にそう訊いた。
　２人は空を見上げ……そして、この刑務所の「外」を見て……。
「まだ、時間がかかりそうなのか……」
　２人の表情からして、そうとしか思えなかった。
　その時、２人が、誰かと無線で話し始める。
「建物内に残ってるのを掃討しろってさ」
「判った」
　ふと、近くに有るショベルカーを見る……。
　待て。
　これって、まさか……。
　私は、ヘルメットのカメラを望遠モードにして……ショベルカーに刻印されている製造番号(シリアル・ナンバー)を撮影し……そして……。