関口 陽(ひなた) (15)

文字数 1,053文字

「て……てめえら……何の真似……うわああッ‼」
 第0棟の中から、出て来たのは「寛永寺僧伽」の「護國院」の「院主」だった。
 しかし、「本土」の「正義の味方」が遠隔操作してるらしいショベルカーに容赦なく攻撃される。
 残念ながら「科学」と「魔法」は互いが互いを苦手としている。
 呪殺などの「魔法」的な攻撃の多くは、「科学」的な方法で防ぐ事は出来ない。少なくとも「今の所は困難」だ。
 一方、「魔法」による攻撃や防御は、対生物・対霊体に特化したもので……純粋に物理的な力……衝撃・熱・化学反応などを生み出す「魔法」は有るには有るが、とんでもなく効率が悪い。
 例えば、火を生み出す「魔法」なら……一〇年ほど修行して仏壇の蝋燭に着火出来るようになれれば御の字だ。
 つまり、自動操縦や遠隔操作されてる機械やロボットに「魔法」で対抗するのは困難だ。
 このおっさんは、この場に居る「魔法使い」の中で、技量(うで)霊力量(ちから)も一番上だろうが……どこの誰かも判んない奴が遠隔操作してる工事機械を止める事は出来ない。
 肉体を強化する「魔法」も有るが……同時に、そんな「魔法」にも限度が有る。
 あわてて、奴は建物の中に引っ込み……。
 ん? どこに電話してんだ?
「『何の真似だ?』だとよ。笑わせやがる」
「あんたが売った喧嘩を買っただけだよ。覚悟しな」
 どうやら、あのおっさんは、私とランを血祭りに上げたかったらしいが……幸か不幸か、他の「自警団」の幹部クラスが私達と一緒に居た。
「ややこしい事になるな……この件が、どんなオチになっても……」
「今更遅い」
 私のボヤきに、笹原(ささのはら)が諦めたような口調でコメント。
「お……おい……何の……あれ……?」
 その時、「四谷百人組」の奴の1人が夜空を指差し……。
「建物ん中に入れッ‼」
 藤井詩織が慌てまくった大声。
 全員が……あ……ブチのめされてた奴らは除く……がそれに従い……。
 一瞬だけ轟音。しかし、強化装甲服(パワードスーツ)の制御コンピューターが音声を一時遮断。
 閃光。これも強化装甲服(パワードスーツ)の制御コンピューターが一時遮断。
 強化装甲服(パワードスーツ)着装(つけ)てなかったら……耳はキーンとなり……鼻は嫌な臭いを感じ……そして肌に熱風を感じていただろう。
 何てこった……。
 ああ……更にややこしくなった。
 「魔法」には遠隔操作されてる機械を止める手段は、ほぼ無い。
 なら、どうするか?
 簡単だ。
 科学技術の産物ってヤツを使えばいい。
 私達が逃げ込んだ建物の外には眩い炎。
 なんて奴だ……。倒れてる自分の部下ごと……私達の「武器」を焼き払いやがった……。
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