関口 陽(ひなた) (6)

文字数 839文字

「『ゾンビもどき』のフリをしてたら、『ゾンビもどき』に襲われないかも知れない、と思って……」
 ランは荒っぽい手で、ゾンビもどきのフリをした囚人を正気に戻した……と言うか、化けの皮を引っぺがした。
「すまん、私には『魔法』関係の知識がそれほど無いので判らないのだが……」
「なんだ?」
「この人物がやった行為は、類感呪術とやらの一種か?」
 ……。
 …………。
 ……………………。
「何だ? その判りにくいボケはッ⁉」
「ああ……そうか。単なる短絡的思考か」
「それ以外の何だってんだよッ?」
「じゃあ、次の質問だ。貴方の着替えは、どこで入手出来る?」
「え……えっと……」
 ゾンビもどきのフリをしていた囚人は……腰抜かして、へたり込み、そして小便を漏らしていた。
「じゃあ、最後の質問だ。本当にゾンビもどきになっていた時、貴方の意識は無かったのか?」
「あ……あぁ……」
「その間の記憶も無しか?」
「あ……ああ……」
「その『ああ』はYesの意味か?」
「そうだ。Yesだ」
「じゃあ、貴方が意識を失なう直前の記憶は?」
「えっ?」
「貴方が意識を失なう直前、どこで何をやってたか覚えているか?」
「え……えっと……刑務作業の間の休憩時間」
「外にまでゾンビもどきが居た理由はそれか……休憩中に中庭あたりに居た所を悪霊に取り憑かれた」
 笹原(ささのはら)が、そうコメント。
「でも……それって、かなりマズい状況じゃね?」
「どう云う事?」
 「渋谷百人組」の侍コスプレの奴の1人が、事態を飲み込めてないようで、そう訊いてきた。
「休憩時間だから……受刑者も職員も、あっちこっちに分散していた可能性が高い。だから……何とかして受刑者や職員の位置情報を取得しない限り、この刑務所の全ての部屋と言う部屋を調べ尽すしかなくなる」
 ランが、そう説明。
 続いて、「原宿Heads」のBガールが手を上げる。
「あのさ、それって、この人数で……」
「無理無理無理。徹夜でもしないと無理」
 だが……ランが何かを考え込んだ後……。
「『魔法』で何とかならないか?」
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