旅行計画

文字数 2,380文字

「う~ん、休むとしたらここあたりかな~」
 俺は北海道旅行に行くにあたり会社のスケジュールを確認していた。今のところ8月上旬が一番都合が良さそうだ。
(ここで夏休みを取るとしたら、10日後ぐらいか……早めに飛行機のチケットや宿の予約をしなきゃな……)
 俺はトイレに移動してスマホで飛行機の空き状況を確認してみる。結構埋まっている便も見られたが、まだ予約は間に合いそうだ。
(家に帰ったら舞佳に話さなきゃな。舞佳が今まで楽しめなかった分、この夏休みはたくさん楽しめるものにしてあげたいしな)
 俺は舞佳の心底嬉しそうな顔を思い出しながらそう決心した。

 *

「8/6~8/8の2泊3日で北海道旅行に行くのは大丈夫そうか?」
 俺は家に帰り、早速舞佳にそう提案した。
「2泊3日もですか!私はいいですけど、結構お金かかりそうですが大丈夫そうですか?」
 舞佳は心配そうな顔でそう聞いてくる。そんな気遣いをありがたく思いつつ
「確かにそこそこお金はかかりそうだけど、せっかく北海道旅行に行くんだから色んなところを観光したいんだ。1泊2日だと回り切れなそうだから今回は2泊3日で行きたい」
 俺は自分の思いを伝える。それを聞いた舞佳は
「確かに北海道は大きいですからね……私も2泊3日で賛成です!あと、私に何か手伝えることありませんか?健さんばかりにやらせるのも申し訳ないので……」
 舞佳は何か力になりたいといった感じで俺にそう聞いてきた。
「そうだな……そしたら今回のルート決めをしてもらおうかな。今俺が行きたいと思っている場所は札幌、函館、小樽なんだが、これらを無駄なく回れるルートを考えてほしいんだ」
 俺は少し難しい注文だと思ったが、舞佳の能力の高さであればうまく決めてくれるだろうと思い頼んでみた。
「分かりました!やってみます。いつまでに決めればいいですか?」
「短くて申し訳ないけど明日までにお願いしたい。宿の予約とかもあるからな。あと空港は行きも帰りも新千歳空港で考えているからその上でルートを決めてほしい」
「やってみます」
 舞佳は早速スマホで色々検索をし始めた。俺も飛行機のチケットを予約するべく自室に移動した。

 *

「終わった~」
 俺は飛行機のチケットの予約が終わり、一息ついていた。気分転換にテレビをつけるとニュース番組をやっていたので聞き流していると、ドアからノック音が聞こえてきた。
「健さん、少しいいですか?」
「お、いいよ~。入ってきて」
 ドアを開くと舞佳がスマホ片手に近づき話しかけてきた。
「ルート考えてきました。とりあえず聞いてもらってもいいですか?」
「えっ。もうできたの?ちょっと話してみてよ」
 俺は驚きを隠せず、そう反応した。舞佳はスマホの画面を見ながらルートを説明し始めた。
「1日目は新千歳空港から小樽へ行きます。小樽を観光した後に札幌へ行き、そこで一泊します。2日目は札幌から函館に移動して観光。終わったら札幌に戻って泊まります。3日目は札幌観光をして新千歳空港へ帰る。このルートであれば同じホテルで済むのと移動時間が少なくて済みます。どうでしょうか?」
 舞佳の話を聞いた俺は、少し考えてから答えた。
「特に問題なさそうだな。短い時間で考えた割にはすごくまとまっててすごいね。同じホテルで済むのも助かる。……ありがとうこのルートで確定にしよう」
 俺は特に反論が思い浮かばなかったのでそう答えた。
(やっぱり舞佳に任せて正解だったな。こんなに早く決めてくるのは驚きだが)
 舞佳は俺の反応を見て嬉しそうにしている。
「よかったです!ちなみに小樽や函館では具体的にどこに行くとか決まってますか?」
「特にそこは考えていなかったな。とりあえず小樽と函館は以前から興味があったから今回ルートに入れたんだよね。逆に行ってみたいところとかあるか?」
 俺は舞佳にそう聞いてみた。
「私も北海道行ければどこでもよかったので特にありません。ですが、よければ私がいくつか候補を考えてみてもいいですか?さっきルートを調べている時に、いくつか気になるところがあったので、もう少ししっかり調べてみたいです」
「いいね助かるよ。多めにピックアップしてもらえるとありがたいな。そこから絞っていくと選びやすいし」
「分かりました!早速調べてみます!……あと気になっていたのですが、なんの番組ですかそれ?」
 舞佳はテレビの方向を見ながらそう聞いてくる。俺はそう言われてテレビを見てみると【特集:急増する若者の家出。その行方とは】というタイトルで特番をやっているようだ。
「あ~。テレビは聞き流してただけだよ……今やっている内容はニュースの特集のようだな。最近、家出する若者が新宿に集まっているみたいだ。犯罪の温床になっていて、最近問題視されているんだ」
 俺は自分の知っていることを混えて、舞佳にニュース番組の内容について説明した。
「なるほど……知らなかったです。私ももしかしたら家出してこうなっていたかも知れませんね」
 舞佳はニュース番組に出ている若者と自分を重ねているようだ。
「そうかもな。でも、舞佳は前の家の環境で高校に通うくらいしっかりしているから、結局こうはならなかったと思うよ」
 俺は今までの舞佳のことを考えながらそう答えた。
「健さんには私がしっかりしているように見えるみたいですが、結構弱いんですよ。何度中退して家出してやろうかと思っていましたし……」
 舞佳は自嘲気味にそう言った。
「でも、結局そうはならなかっただろ?俺はすごいことだと思うぞ」
 俺は思ったことを率直に言った。
「……ありがとうございます。我慢したことで今があると思うと、本当に我慢しててよかったと思います。……じゃあそろそろ調べてきますので、また相談しに来ますね」
 舞佳はそう言うと部屋を出ていった。俺はパソコンで札幌の宿を調べ始めた。
 
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