告白

文字数 1,162文字


 タクシーを降りて、私たちは駅近くの公園のベンチに腰掛けた。
 そして健さんは私の目を見てきた。久しぶりに目が合うと、一緒に暮らしていた時のことを思い出し、私は涙が出てきた。その様子を見て健さんも涙を流していた。そして静かに健さんは話始めた。
「俺、舞佳がいなくなって気づいたことがあるんだ。舞佳と一緒に過ごしていた時間が俺にとってかけがいのない時間になっていたってこと。リビングで一人過ごしていると、いつもより広く感じるんだ。そうして過ごしていると、舞佳と過ごした日々を思い出して、それがとても辛かった。……もう舞佳がいない生活は無理みたいだ」
 私は涙を流しながらもじっと健さんの顔を見つめて聞いていた。
「だから、もういなくならないでくれ。俺には舞佳以外と一緒にいるなんてもう考えられない。
 ずっとそばにいてほしい。俺は保護者としてではなくパートナーとし舞佳と一緒に暮らしていきたい。好きだ舞佳。愛してる」
 そう言うと健さんは私に手を差し伸べてきた。私はそれに応えるようにその手を握り返して、自分の気持ちを話始めた。
「私、健さんと暮らし始めて、何もかも楽しかったです。一緒に買い物行ったこと、バイトを始めたこと、旅行のプランを一緒に考えたこと。私の中で止まっていた時間が動きだした気がしました。健さんと過ごす時間は、私にとって幸せそのものでした。でも、私の中で健さんへの恋心が芽生え始めてからは、健さんと一歩進んだ関係になりたいと思いながらも、それが言えなくて、一緒にいる時間が辛くなってしまいました。……馬鹿ですよね。勝手に辛くなって。そして、花火大会の日に健さんが私のことを保護対象として接していることを知って、これからも一緒にいることが耐えられなくなりました。健さんの元から離れれば楽になると思って逃げ出してきましたが、結局健さんのこと忘れることはできなかったです。健さんと離れても、ずっと健さんのことが頭から離れなかったです。そんな中で健さんが現れて、また私を助けてくれました。……もう私我慢できません。ずっとずっとこれからも健さんと一緒に生きていたいです。大好きです、愛してます」
 私がそういうと、健さんは私の手を引き強く抱きしめた。――それはあの時見た夢と同じ光景で、私がずっと求めていたものだった。私も健さんの背中まで手を伸ばして強く抱きしめた。
 しばらくして、健さんは抱きしめていた手を背中から肩へと移動させて、私の顔をしっかりと見た。
 お互いの目を見合わせて、笑いあう。そして、健さんはまた抱き寄せてきて今度は唇にキスをしてきた。
 初めてのキスは、とても優しい感触で健さんの温もりが唇から伝わってきて、なんだかそれがとても愛おしかった。私は、もう離したくないという気持ちで、健さんのことを強く抱きしめ返した。
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