文字数 1,534文字

 期末試験の日程が近づき、学校でも試験の話題が増えてきた。クラスメイトも授業に対して真剣に聞くようになってきている。私は、順調に勉強を進めており、この調子でいけば上位を狙える感触がある。ただ、少し懸念があるとすれば、母親の暴力がエスカレートしていることで私の睡眠時間が減ってきていることだ。
(なんか今日も疲れがとれてる感じがしないなぁ……眠い感じがずっと続いているのに夜になるとなかなか眠れない。授業中に寝ると授業態度の評価下がるし起きていなきゃいけないのに……)
 私は、眠い目をこすってなんとか授業に集中しようとする。集中するのに精一杯で勉強の効率が落ちているのが気になる。
(なんとしても特待生を維持しなきゃ。高校卒業してあの家を出てやるんだ)
 私は昔にした決心を思い出し、改めて授業に集中し始めた。

 *

 放課後になり、私はいつも通りすぐに家に帰る。途中で通る公園に行かなくなって1週間ほど経った。公園でリフレッシュしたい気持ちにもなるが、授業に集中しきれなかったこともあり、今日の復習をしっかりしておきたい。私は公園を横目に通り過ぎ家へと帰っていった。
 私は家事を一通りこなしていき、夕飯の支度が終わるころに母親が帰ってくる。
(そろそろ機嫌がよくなっていればいいんだけど……)
 そう願うも届かず。リビングに入ってきた母親の表情は明らかに険しい。私はいつものようにすべてを諦めて無感情になろうとする。しかし、何か所もできた青あざが痛んでいるためか、スムーズに無感情になれない。
(どこもかしこも痛いなぁ……同じところ殴られると流石にきついのよね。なんとかして上手く同じところ殴られないようにしなきゃ)
 そう思っているのもつかの間、私は腕を掴まれ壁側まで連れてかれ、壁に向かって投げられる。投げられた時に、うまく体勢を変えて同じところにぶつかるのを避ける。だが、そうすることにより腰の下の方をぶつけ、想定外の痛みがしてうずくまってしまった。母親はすかさず顔を殴ってくる。準備ができていなかったので、つい首のあざが出来ているところを壁にぶつけてしまう。
 「うぅ……」
 私は、痛いのを耐え切れず少し声が漏れてしまった。そんなのお構いなしに母親は私に怒りをぶつけてくる。
「まじでうざいうざいうざい。きめぇんだよあいつ」
 息つく暇もなく、私は何度も壁にたたきつけられる。あざになったところを何度もぶつけ、痛みがどんどん増していく。声を抑えることができず、何度もうめき声が漏れる。
(ちょっとこのままだとやばいかも……痛みが止まらない……辛いよぉ)
 痛みが限界に近づき、辛いと思う感情があふれてきている。抑えきれずにうめき声が何度も出る。いつもより時間が長く感じる。
(いつまで続くんだろ……もうやめてよ。なんで私ばっかこんな目に合わなきゃならないの。私が何をしたっていうの……誰か助けて……)
 私はもう限界みたいだった。今までの日々が走馬灯のようによみがえる。小5で実の両親を亡くして以来、ずっと苦しみ続けた。頭の中が辛い記憶でいっぱいになる。
(もういいかな……頑張っても報われないこんな世の中で生きていく意味なんてあるのかな……)
 私は楽になりたかった。そんなことを思っていると
「ピンポーン」
 家のインターホンの音が鳴り響き、母親は一度手を止める。
「ちっ、誰だよこんな時間に」
 母親はイライラしながらインターホンを鳴らした人を確かめに行く。ひとまず私は解放されたので姿勢を楽にする。痛みから解放された私は、自分が涙を流していたことに気づいた。
(あぁ、私ってまだ涙流せたんだな……)
 私は涙をふきとる余力もなかったので、流れた涙をそのままにして、ただぼーっと天井あたりを見つめた。
 
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