安西舞佳の朝は早い

文字数 1,775文字

「ジリリリリリリリリ」
 目覚ましの音で私――安西舞佳は目を覚ます。時刻は6:00。眠い目をこすりながら起きる。
(……もう朝か……今日はいつもよりよく眠れたな……)
 最近あまり寝付きがよくなく、あまり眠れなかったが、昨日はすぐ眠れたのでだいぶ調子が良い。
(疲れがたまっていたからかな……それとも昨日のファミレスでいろいろ話せたからかな。とりあえず今日も早く朝の支度しなきゃ……)
 私は、まずは洗面所で顔を洗いにいき、そこから朝の支度をする。朝はいろいろやらなきゃいけないことがある。まずは、昨日の家族の洗濯物を洗濯機に入れて回す。その間に、朝食と自分の昼の弁当を作る。母親はパートの時間が昼間からなのでこの時間は寝ているため、私がいつも作っている。まずは自分の昼の弁当を作るが、基本的には昨日の残りものを入れる。テキパキと料理をこなし、朝食の準備ができあがるころには、洗濯が終わっているので今度は天気を確認する。今日は一日晴れみたいなので洗濯物を外に干す。洗濯物を一通り干し終わると父親と妹(血のつながりはない)が起きてくるので、料理したものを配膳する。家族が食べている間に私は風呂や洗面所などの水回りを掃除する。掃除が終わると家族がご飯を食べ終わるころなので、片付けと食器洗いをする。
(……おっ、ソーセージが少し残ってる!ラッキー!たべちゃおっと)
 私の朝食は大体こういった余りものだ。朝はそんなに食べる方ではないのでこれで割と満足している。ソーセージを食べながら食器を洗い、一通り終わると今度は学校の準備をし始める。時刻は7:20――いつも7:30までに家を出るので順調なペースで準備が進んでいる。
(よし……準備終わり!今日はあまり疲れを感じないし調子いいかも!)
 学校の準備を済ませ家を出る。学校は隣駅にあるのでいつも電車に乗り登校している。家から大体30分で着くので学校には8時くらいに着く。朝のホームルームが始まるのは8:30だが、早めに着いた30分で授業の予習や復習をしている。
(昨日のファミレスだ!……昨日のご飯は美味しかったなぁ……また食べれるといいなぁ……)
 最寄り駅に着くと、ファミレスが見え私は昨日のことを思い出した。外食をしたのは小学生以来で、本当に楽しかった。
(藤村さんには感謝しきれないなぁ……でも、これ以上甘えるわけにはいかない。私に関わってもいいことなんてないんだから……)
 両親が他界してからは辛い日々が続いた。助けを求めたかったが、転校したこともあり周りに頼れる人はいなくなってしまった。そこから私は、色々と諦めるようになった。そうやって諦め始めたころから、不思議と気持ちが割り切れるようになり、あまり辛さを感じなくなった。同時に喜ぶこともなくなり、ただ淡々と日々が過ぎていくようになった。
(何かを期待すると、期待が裏切られるたび辛くなるから……藤村さんにはつい色々と話しちゃったのは反省だな……)
 私は、昨日の件で少し藤村さんに期待をしてしまっているのかもしれない。あの人ならなんとかしてくれるかもしれない。でもその期待をすればするほど辛くなってしまうので、昨日のことも考えないようにした。
 
 *

 学校に着くと、クラスの人の何人かと目が合うが、私と分かると何もなかったかのようにほかのクラスメイトと話し始める。高校が始まり2か月が経つと、仲良しグループがいくつかできるようになり、そこで固まり話をするようになっていた。最初のころは、グループはなく、私も何度か話しかけられたがそれも今は無くなった。
(……はぁ、しょうがないとはいえ少しくるものがあるなぁ……)
 私は、放課後の遊びや部活に誘われたが、妹を迎えにいくことや家事をやらなきゃいけないため断らなくてはならなかった。また、遊びに行くとしてもお金がないので高校生の遊びにはついていけなかった。
 私は、自分の荷物をロッカーに入れて、席に座ってからは勉強をし始めた。一応特待生で入学しているのでそれを維持しなくてはならない。入学金と1年目の授業料はセーブできているが、それでもお金はかかるので奨学金を借りて払っている。余った奨学金は親の口座に入るので私の手元にくることはない。
「キーンコーンカーンコーン」
 チャイムが鳴ると担任が入ってきて朝のホームルームを始めた。
 
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