p52 誰よりも柴田
文字数 1,439文字
「まずい、捕食者だ。おじさん、避難しなきゃ」
まさか、み空 ゆく捕食者だろうか。
軍隊が駆けつけてくれるまで、何が何でも安全な場所へ避難せねばと、ソロは慌ててローンのTシャツを引っ張った。
「いけません、女王様を紹介して下さらないと」
「そんなことを言っている場合ではございません」
ソロもつられて丁寧 になる。
「女王様の詳細を教えてください。さもなくば、おじさんは動きません」
「白い」
「もうちょっと全容を教えてください」
「おじさん、ウンコも迎えに行かないと」
「ウンコはしぶとい子なので放って置いても大丈夫です。女王様の情報開示を請求します」
部屋に車椅子があるのを見つけて、ソロはこれにローンを乗せて強制的に移動させることにした。Tシャツの裾 を引っ張って、ベッドから移動を試 みる。
それにしても、柴田家の男はなぜ冬でも半袖なのだろう。
そんなに暑いか。
「ダメです、女王様についてもうちょっと教えてくださらないと」
「キャピタルよりでっかい子供がいる。三人いたけど上の二人は戦死した」
「なんと、気の毒な女王様。ぜひ私 めがお傍 に行ってお慰 めしてさし上げないと」
「孫がいっぱいいるから平気だ」
「孫がいっぱい。私 めと同じくらいか、それとも上か・・・・・・」
先ほどまでのウッキウキに弾 んだ声から、深く考え込むような声音 に変わり、ソロは諦めてくれたかとホッとした。
「イイ! ますます会いたい、孫に混ざって女王様に甘えたい!」
ソロは己 の甘さを深く悔 いた。
このオジサンはバンクとキャピタルの大本 である。
他の誰よりも柴田なのである。
「あわよくば、おじさんは女王様の伴侶 になって、王様になる」
夢もでっかい。
「そう簡単に謁見 できるかわかんねーぞォ、相手はなんせ浮島の女王様だぜぇ」
ソロはローンを引っ張って、車椅子に無理やり乗せようとしたが、さっきから全然動かない。
キャピタルより重い。
そもそも、元のサイズのバンクよりデカい体格である。
ソロが一人で動かせるわけが無いのだ。
「おじさん、危険だからもう行かないと。キャピタルもウンコしてるときに捕食者に食われたら無念すぎるだろ」
その時、不思議なことが起こった。
どれだけ引っ張っても動かなかったローンの体が、ソロの力で動いた。
あ、なんかイケるかも。
なんとなしにそう思って、ソロはローンの膝下に左腕を差し込み、右腕を腰に回し、自分の重心を後方へ逸 らした。
「おっ・・・・・・? 」
ローンはベッドからお姫様抱っこで車椅子に移動され、素直に着席した。
「きのこのくせに力持ちじゃないか」
ソロも何が起こったのかよくわからないが、これでキャピタルを迎えに行ける。
「おじさん、ここから一番近いトイレ行くよ。三人で避難するよ」
車椅子も難なく動かせる。
しかし妙である。
なにやら普段より視線が高い位置にある気がするのである。
引き戸を開けて廊下に出ると、出遅れたのか、院内はもぬけの殻になっていた。
患者が残っているというのに、なんたる対応か。
しかし、このオジサンの生態を鑑 みて、病院のスタッフの気持ちもわからないでもない。
十人いたら十二人が病院側の対応は『悪くない』に票を入れてくれるだろう。
「トイレに急ごう」
「待ちなさい、ソロくん」
「どうしたの、おじさん」
「さっきは、うそつきって言って悪かった。言葉に違 わぬ乙女」
ローンが自分の顔を興味深く見上げているのを目にして、ソロは『もしや』と思った。
「おじさん、オレ、もしかして今、美少女(仮)か」
まさか、み
軍隊が駆けつけてくれるまで、何が何でも安全な場所へ避難せねばと、ソロは慌ててローンのTシャツを引っ張った。
「いけません、女王様を紹介して下さらないと」
「そんなことを言っている場合ではございません」
ソロもつられて
「女王様の詳細を教えてください。さもなくば、おじさんは動きません」
「白い」
「もうちょっと全容を教えてください」
「おじさん、ウンコも迎えに行かないと」
「ウンコはしぶとい子なので放って置いても大丈夫です。女王様の情報開示を請求します」
部屋に車椅子があるのを見つけて、ソロはこれにローンを乗せて強制的に移動させることにした。Tシャツの
それにしても、柴田家の男はなぜ冬でも半袖なのだろう。
そんなに暑いか。
「ダメです、女王様についてもうちょっと教えてくださらないと」
「キャピタルよりでっかい子供がいる。三人いたけど上の二人は戦死した」
「なんと、気の毒な女王様。ぜひ
「孫がいっぱいいるから平気だ」
「孫がいっぱい。
先ほどまでのウッキウキに
「イイ! ますます会いたい、孫に混ざって女王様に甘えたい!」
ソロは
このオジサンはバンクとキャピタルの
他の誰よりも柴田なのである。
「あわよくば、おじさんは女王様の
夢もでっかい。
「そう簡単に
ソロはローンを引っ張って、車椅子に無理やり乗せようとしたが、さっきから全然動かない。
キャピタルより重い。
そもそも、元のサイズのバンクよりデカい体格である。
ソロが一人で動かせるわけが無いのだ。
「おじさん、危険だからもう行かないと。キャピタルもウンコしてるときに捕食者に食われたら無念すぎるだろ」
その時、不思議なことが起こった。
どれだけ引っ張っても動かなかったローンの体が、ソロの力で動いた。
あ、なんかイケるかも。
なんとなしにそう思って、ソロはローンの膝下に左腕を差し込み、右腕を腰に回し、自分の重心を後方へ
「おっ・・・・・・? 」
ローンはベッドからお姫様抱っこで車椅子に移動され、素直に着席した。
「きのこのくせに力持ちじゃないか」
ソロも何が起こったのかよくわからないが、これでキャピタルを迎えに行ける。
「おじさん、ここから一番近いトイレ行くよ。三人で避難するよ」
車椅子も難なく動かせる。
しかし妙である。
なにやら普段より視線が高い位置にある気がするのである。
引き戸を開けて廊下に出ると、出遅れたのか、院内はもぬけの殻になっていた。
患者が残っているというのに、なんたる対応か。
しかし、このオジサンの生態を
十人いたら十二人が病院側の対応は『悪くない』に票を入れてくれるだろう。
「トイレに急ごう」
「待ちなさい、ソロくん」
「どうしたの、おじさん」
「さっきは、うそつきって言って悪かった。言葉に
ローンが自分の顔を興味深く見上げているのを目にして、ソロは『もしや』と思った。
「おじさん、オレ、もしかして今、美少女(仮)か」