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文字数 1,269文字
ソロはヒイラギの木陰から離れると、自分を待つ女子たちのもとへ走った。
「えらい探したで、まっしゃん」
ソロを『まっしゃん』と呼ぶのは関西弁のザッヴァトーキョーただ一人である。
松本さん→松本チャン→まっチャン→まっしゃんという進化を遂げてこの呼び名となった。ソロの一つ下で、この中では最年少の13歳だ。
「あの・・・・・・」
ソロは経口摂取をサボっていた期間が長かったせいか、口を開く力が弱い。口をあまり開かないで早口で喋ってしまうことに加えて、ウィスパーボイスで滑舌 が悪い。
それを気にして、かっこ悪く思われたくない者の前で話すとき、ソロは口ごもってしまう癖がある。または、あまり喋らないようにしている。
「ゆっくりでいいよ、松本さん。どうしたの? 」
背の高いバンビーナが、ソロが緊張しないように優しく話しかけてくれた。今は蝗害 と降灰対策の服装でわからないが、黒のぱっつん前髪のロングで身長が高い。
ソロの一つ上で、15歳の女子だ。先日、彼氏と思しき男の原付の後ろに乗っているのを見かけた。その彼氏がよっぽど好きなのか、フルフェイスのヘルメットを幸せそうに見上げていた。
きっとバンビーナの日経平均ラブ価も最高値を更新中なのだろう。
「あ、あべいゆとだけ話したい・・・・・・」
「うん、いいよ」
バンビーナの胸ポケットから元気のよい返事が聞こえた。
布にくるまれた手乗りサイズの小さなアベイユが、胸ポケットから顔を出した。
ちゃんとサイズに合った小さなゴーグルとマスクもしている。
アベイユは見た目からしてきのこを極めており、なおかつ、口も堅い気がした。
「松本さん、手を出して」
バンビーナは胸ポケットからアベイユを取り出すと、ソロの手に乗せた。
降灰対策素材を通して伝わってくるアベイユの温かさに、ソロは心の市場のラブ高を押し上げているリョウというきのこがありながらドギマギしてしまった。
「ナイショ話しておいで。アタシとバトーはここで待ってる」
バトーはザッヴァトーキョーの略だ。名前が長いからそう呼ばれている。
ソロはバンビーナにうなずくと、アベイユを手の平に乗せて二人から離れた。
バッタの大群にアベイユが齧 られないように、両手でしっかり守った。
「どうしたの? ソロ」
「キャピタルが困ってて、引率の先生に来て欲しいんだ」
「いいよ、ちょっと待ってて」
菌糸 が密できのこが濃い者は、黙っていても菌根菌 を通して他のきのことコミュニケーションを取ったり、きのこ同士の揮発性物質で情報のやり取りをすることができる。
「先生すぐ来てくれるって」
「ありがとう」
「僕たち、さっき変なものを拾ったんだ。それを届けに交番へ行くんだけど、ソロも一緒に行こう。先生にはもう断ってあるし、お昼休み中に戻って来れるから」
「変な物? 」
「灰の中からお面みたいなものが出て来たんだ。後ろに何か文字が彫ってあったんだけど、外じゃゴーグルが外せないからよく見えなくて。多分、持ち主の名前だと思うんだ」
「ん、オレも行く。でも先生がキャピタルんとこ来たらでもイイかな」
「えらい探したで、まっしゃん」
ソロを『まっしゃん』と呼ぶのは関西弁のザッヴァトーキョーただ一人である。
松本さん→松本チャン→まっチャン→まっしゃんという進化を遂げてこの呼び名となった。ソロの一つ下で、この中では最年少の13歳だ。
「あの・・・・・・」
ソロは経口摂取をサボっていた期間が長かったせいか、口を開く力が弱い。口をあまり開かないで早口で喋ってしまうことに加えて、ウィスパーボイスで
それを気にして、かっこ悪く思われたくない者の前で話すとき、ソロは口ごもってしまう癖がある。または、あまり喋らないようにしている。
「ゆっくりでいいよ、松本さん。どうしたの? 」
背の高いバンビーナが、ソロが緊張しないように優しく話しかけてくれた。今は
ソロの一つ上で、15歳の女子だ。先日、彼氏と思しき男の原付の後ろに乗っているのを見かけた。その彼氏がよっぽど好きなのか、フルフェイスのヘルメットを幸せそうに見上げていた。
きっとバンビーナの日経平均ラブ価も最高値を更新中なのだろう。
「あ、あべいゆとだけ話したい・・・・・・」
「うん、いいよ」
バンビーナの胸ポケットから元気のよい返事が聞こえた。
布にくるまれた手乗りサイズの小さなアベイユが、胸ポケットから顔を出した。
ちゃんとサイズに合った小さなゴーグルとマスクもしている。
アベイユは見た目からしてきのこを極めており、なおかつ、口も堅い気がした。
「松本さん、手を出して」
バンビーナは胸ポケットからアベイユを取り出すと、ソロの手に乗せた。
降灰対策素材を通して伝わってくるアベイユの温かさに、ソロは心の市場のラブ高を押し上げているリョウというきのこがありながらドギマギしてしまった。
「ナイショ話しておいで。アタシとバトーはここで待ってる」
バトーはザッヴァトーキョーの略だ。名前が長いからそう呼ばれている。
ソロはバンビーナにうなずくと、アベイユを手の平に乗せて二人から離れた。
バッタの大群にアベイユが
「どうしたの? ソロ」
「キャピタルが困ってて、引率の先生に来て欲しいんだ」
「いいよ、ちょっと待ってて」
「先生すぐ来てくれるって」
「ありがとう」
「僕たち、さっき変なものを拾ったんだ。それを届けに交番へ行くんだけど、ソロも一緒に行こう。先生にはもう断ってあるし、お昼休み中に戻って来れるから」
「変な物? 」
「灰の中からお面みたいなものが出て来たんだ。後ろに何か文字が彫ってあったんだけど、外じゃゴーグルが外せないからよく見えなくて。多分、持ち主の名前だと思うんだ」
「ん、オレも行く。でも先生がキャピタルんとこ来たらでもイイかな」