p65 み空ゆく捕食者
文字数 1,180文字
続いて、乾いて籠 った音が聞こえたかと思うと、バッタが一斉に飛び立つ音と気配がした。
「バカ野郎っ。座布団投げサボって、テメーは何やってんだ」
顔を上げると、ガスマスクのキャピタルが土俵掃除のホウキでみ空 ゆく捕食者をボコボコにボコしていた。
脳内で勝手に『タランテラ』が流れ出す。
「ぱぴたん」
「一人で出歩くな。捕食者にねらわれてるぶんざいで」
ソロがよろめきながら立ち上がると、ポッケから何かが落ちた。
去年、浮島でキャピタルに借りた鏡だった。
「なあ、ぴャピタル」
「なんだっ、今いそがしいっ」
「望む幻覚を見せてくれる奴に、鏡を向けたらどうなるんだろうな」
「わかんね」
「離れろ、キャピタル」
ソロはみ空 ゆく捕食者へ鏡を向けた。
途端 、バッタ共 が勢いよく飛び立って、キャピタルとソロに集 っていたバッタも逃げ出した。
み空 ゆく捕食者に集 っていたバッタも散った気配がして、ソロはその全容を見ようと目を開こうとした。
『見てはいけない』
女にしては低すぎて、男にしては高い声が、ソロの頭に鋭く響いた。
『情けを知っているのなら、弱った姿を見ないであげて。鏡を置いて、二人で逃げて』
「キャピタル、退却だ! 」
ソロはキャピタルの手を取ると、一目散 に駆け出した。
「軍に通報だ。鏡で動きを封じ込められるって」
「言われなくてもするしぃ。取組 の邪魔ンなるからサイレン鳴らすなって言っとくわ」
はて。たしか、こないだ『サイレンを鳴らすな』と頼んだら『それじゃ近所の人が捕食者に警戒できねーだろ。自分勝手なヤローだぜ』とかなんとか言っていた気がするのだが。
キャピタルは純粋な人間のみに国から支給されている特殊な携帯電話で軍へ通報し終えると、ソロに向き直った。
「お前、やっぱ頭いいな」
「悪ぃな、アレ、浮島でオメーに借りた鏡なンだわ」
「気にすんな。まだあるし。つーか、昨日」
昨日のことを思い出し、ソロはウンコウィップを教室に置いてきたことを後悔した。
コイツと共 に、み空行 く捕食者にもソニックブームを堪能 させてやればよかった。
「昨日、なんでアイツも来てたんだよ」
「は? 」
「アイツだよ、アイツ。クソクソのクソ林田だよ」
「ファ!? 」
「昨日、軍のサイレンが鳴って、おれがウンコを切り上げて廊下出たら、林田がオヤジの車椅子押してたんだよ」
その時、二時間目の鐘が鳴った。
「ヤバい! あのクソ野郎の不戦勝になる! 」
キャピタルはソロを荷物のように肩に担 ぐと、ダッシュで土俵へ向かった。
「お前、ダイエットしろよ。やっぱクソ重たいぜ。そのナリで林田より重いって、どー考えたって、おかしいだろ。にいちゃんのせいかつしゅうかんびょうもびーえむきんといっしょにからだんなかにはいってこれすてろーるとかちゅうせいしぼうとか」
ソロはキャピタルの言葉が信じられなかった。
そして、ある予感が脳内を占めていた。
「バカ野郎っ。座布団投げサボって、テメーは何やってんだ」
顔を上げると、ガスマスクのキャピタルが土俵掃除のホウキでみ
脳内で勝手に『タランテラ』が流れ出す。
「ぱぴたん」
「一人で出歩くな。捕食者にねらわれてるぶんざいで」
ソロがよろめきながら立ち上がると、ポッケから何かが落ちた。
去年、浮島でキャピタルに借りた鏡だった。
「なあ、ぴャピタル」
「なんだっ、今いそがしいっ」
「望む幻覚を見せてくれる奴に、鏡を向けたらどうなるんだろうな」
「わかんね」
「離れろ、キャピタル」
ソロはみ
み
『見てはいけない』
女にしては低すぎて、男にしては高い声が、ソロの頭に鋭く響いた。
『情けを知っているのなら、弱った姿を見ないであげて。鏡を置いて、二人で逃げて』
「キャピタル、退却だ! 」
ソロはキャピタルの手を取ると、
「軍に通報だ。鏡で動きを封じ込められるって」
「言われなくてもするしぃ。
はて。たしか、こないだ『サイレンを鳴らすな』と頼んだら『それじゃ近所の人が捕食者に警戒できねーだろ。自分勝手なヤローだぜ』とかなんとか言っていた気がするのだが。
キャピタルは純粋な人間のみに国から支給されている特殊な携帯電話で軍へ通報し終えると、ソロに向き直った。
「お前、やっぱ頭いいな」
「悪ぃな、アレ、浮島でオメーに借りた鏡なンだわ」
「気にすんな。まだあるし。つーか、昨日」
昨日のことを思い出し、ソロはウンコウィップを教室に置いてきたことを後悔した。
コイツと
「昨日、なんでアイツも来てたんだよ」
「は? 」
「アイツだよ、アイツ。クソクソのクソ林田だよ」
「ファ!? 」
「昨日、軍のサイレンが鳴って、おれがウンコを切り上げて廊下出たら、林田がオヤジの車椅子押してたんだよ」
その時、二時間目の鐘が鳴った。
「ヤバい! あのクソ野郎の不戦勝になる! 」
キャピタルはソロを荷物のように肩に
「お前、ダイエットしろよ。やっぱクソ重たいぜ。そのナリで林田より重いって、どー考えたって、おかしいだろ。にいちゃんのせいかつしゅうかんびょうもびーえむきんといっしょにからだんなかにはいってこれすてろーるとかちゅうせいしぼうとか」
ソロはキャピタルの言葉が信じられなかった。
そして、ある予感が脳内を占めていた。