第14話 北海道マラソン (1989年8月27日) 

文字数 2,052文字

★「サッポロの休日」

チームターザンとの契約中は白石トレーナーのメニューに沿って、また雑誌取材の都合での練習が中心だった。それがプツンと無くなった。
自分で練習を運用していかなければならなくなった、当たり前のことである。
幸い、ギアーは各種目サポートを受けたものがまだ手元にあった、特にバイクはパナソニックが2台。とはいっても、人は(僕は)目標がないと練習ができないものだ、まして練習計画など。
まだ3年間の出禁が解けていない「宮古島」、三度目の「びわ湖」はエントリーしたのかどうか、記憶にも記録にも残っていない。「ターザンのとき」が終わって一種の燃え尽き症候になっていたのだろうか。
1989年の練習結果は、僕のトライアスロン人生の中で唯一不明になっている、その記録が残っていない。それでも8月の北海道マラソンの資料が残っているのは、大好きなマラソン中心の一年だ
ったことを意味しているのかもしれない。

第2回北海道マラソンはバルセロナオリンピックに向けて真夏のマラソンを科学するとう大層なテーマがあり、谷口浩美、増田明美選手が出場した。タイム制限が3時間半というエリート大会だった。
3時間20分14秒の記録が物語る通り、北海道、真夏の暑さに(8月27日)に負けてしまった、
バルセロナを断念した(もちろん冗談)。
ただし、表彰パーティが豪華だったこと、スポンサーのサントリー佐治社長にお酌していただいたこと、増田・谷口選手とお話したことを覚えている。




ちなみにこの大会には北海道出張を兼ねて出かけている、時代はバブルの真っ盛りだった、
僕は39歳 もうすぐ不惑を迎える。
1989年の暮れ、クリスマスプレゼントが届く、宮古島大会の出場承認だった、
ようやく宮古島に逢える、初めて逢える。

少し時を巻き戻してみよう、
1988年10月一通のはがきが届いた。


高山信行さんが海老名市内でトライアスロンショップ 「SUB3」を始めるとのことだった。
高山さんとは、団地のマラソン仲間久保田さんの紹介で面識があった。
しかし、チームターザンの契約のため一緒に練習することはなかった。
時代はトライアスロン黎明期の真っただ中、トライアスロンの先駆者が日本各地でその存在を勇ましく主張していた。
高山さんは、日本で最初のトライアスロン「皆生大会」第2回で3位入賞のパイオニア、宮古島大会でも上位入賞するなど「中年の星」と称賛されていた(僕より3歳年上)。
彼のクラブチーム名「SUB3」はロングトライアスロンのランパート(42.195㎞)でSUB3を達成することを目標としている。
3歳年上の中年の星が脱サラしてトライアスロン一筋に生きるという・・・正直なところ羨ましかった。1989年、「SUB3」との付き合いはまだ始まっていなかった。

閑話休題、
1989年暮れの宮古島出場承認は、ローカル裏ルール通り3年間の謹慎が解けた証だった。
年末から宮古島に向けてのトレーニングメニューが出来上がった、新しい目標ができたのだった。ひとり練習の習慣から抜け出せないまま、4月15日に向けての練習が始まる。
基本はチームターザンの時のメニューの焼き直し、スイム、バイク、ランともにそれほどの迷いはなかった、宮古島コースでアイアンマンディスタンスより長いのはラン(42.195㎞)だけ、それは僕の得意種目だった。
1990年3月のある一週間のトレーニング記録が残っている。
SWIM 4km 、BIKE 154㎞、RUN 31㎞、
今から見てもかなり高度なメニューを作成し実行していたことが分かる、一人で考えたにしては。



問題はバイクトレーニングだった、海老名から藤沢、鎌倉を経由して134号を抜け茅ヶ崎から戻るルート、 休日のこのルートは車が混雑していて危険だった。何度か、心無いドライバーに幅寄せされた、まだ134号が狭かったころだ。
当時、競輪の中野選手が有名だった、ロード練習中「中野 がんばれ!」という子供の声、
まだまだトライアスロンは世間に知られていなかった。
それでも、鎌倉市内をバイクで通り抜けるのが愉しかった。大勢の観光客の目の前で「これが、トライアスロンだ」という意気で疾走してみせた。
ナルシストの面目躍如である。
宮古島大会の準備はいつも1月スタートになる、出場決定が年末のためだ。
1月から3月までの大事な時期はあいにく一番寒い時期になる。
どうしてもバイク練習がつらい。
茅ヶ崎で雪が降りだし雪だるまで帰宅したことがあった、両手は凍えて動かなくなっていた、まだ防寒用のグラブがなかった、いや持っていなかった。





ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み