静香ルート②
文字数 1,295文字
この学校には綺麗な庭園がある。誰が管理をしているのかは知らないけれど、いつ見ても花は綺麗に咲いているし、とても整備が行き届いている。
特に綺麗なのがバラであり、色とりどりのバラたちが咲き誇り、バラ園を築いている。
ここの庭園は、私のお気に入りの場所だ。
大抵1人でここでお昼寝をしたり、読書をしたりすることが多いのだが、今日は先客が居た。それも、意外な人物だった。
静香さま……？
……ん？ って、うわあ！ あんた何でここに居るのさ！
静香様こそ！ 私はここで今からお昼寝をしようと……って、何をしているんですか？
あっ、ちょっとだめ、見るなぁ！
これ……バラ、ですか？
静香様の後ろには綺麗な赤いバラが咲いていた。一輪だけじゃなく沢山咲いている。
もしかして、このバラたち、静香様が育てているんですか？
ちがっ……違くない…けど……。別に育てているわけじゃないんだからね！ こいつら放っておいたら枯れそうだし仕方なく僕が見ててあげてるだけ！
それって静香様が育てているっていうことですよね
……まあ、あんたの中でそういうことにしておけばいいんじゃないの
このバラ、ここに来くるといつも気になってたんです。こんなに綺麗に咲いていて、いったい誰が咲かせたんだろうって
バラって勝手には咲かないじゃないですか。絶対誰かの手助けがなければ咲くことが出来ない。静香様だったんですね。もしかして、ここにある他の花たちもですか？
この庭園には薔薇の他、ラベンダーやコスモス、スミレ等の花も植えてある。
違う、このバラだけ。僕がここのスペースを借りて勝手に植えた。他は知らない。この学校も優秀な庭師を雇っているから多分そいつなんじゃないの
そうなんですか……
……何？ 僕がここでバラ育ててるのって意外だった？
いっ、いえ！ 納得だなって思ったんです
納得？
はい。こんなに綺麗にバラを咲かせることが出来るのって静香様だからだなって納得しました
なにそれ。どういうこと？
バラを育てている静香様が容易に想像できるんです。静香様とバラってイメージがぴったり合うんですよね。静香様だからバラをこんなにも綺麗に咲かせることが出来るんだなって思いました
……なにそれ、意味わかんない
あはは。自分でもちょっと意味分かんなかったです。すみません。でも、そう思ったから言ったまでです
あんたって、変なやつ
でも、変なやつの方が面白くないですか？
ふっ、まあね。……ねえ。僕がここでバラを育てていることは内緒にして欲しいんだけど
？ どうしてですか？こんなに綺麗なのに……
理由なんていいの！ あんたと僕だけの秘密。そしてこの庭園は僕たちだけの秘密の場所。わかった？
はいっ！ 秘密ですか、いいですね。秘密の場所というには少し分かり易いですが
いいの！ それでも、それでもいいの……
静香様？
……なんでもない。もう昼休み終わっちゃうし、そろそろ行ったら？
あ、はい。そういえば。静香様は授業出ないんですか？
僕はあんなの受けなくても分かっているし、出るだけ無駄。じゃあね
あ、はい……
静香様に背中を押され、私は庭園を後にした。昼休み終了を告げるチャイムが鳴り、私は早足で教室へと向かった。
