静香ルート⑤

文字数 1,821文字

昨日に引き続き、また電話が鳴った。

出るつもりはなかったけれど、自然と手が受話器を握っていた。まるで電話の相手に操られているようだった。相手は予想通りだった。

静香「もしもし」

静香父「静香か? 今日は随分とあの女と親しくやっていたじゃないか。ミカゲが教えてくれたぞ」

静香「……なに、ミカゲも味方に付けたの?」

静香父「あいつは私貸しがあるからな。お前に忠誠を誓ってはいるが所詮東十条の犬だ。お前の味方など誰1人居ない。分かっておけ」

静香「……相変わらずゲスなやつ。でも僕には――」

静香父「あの女が居るって言うのか? 所詮は他人だ。それに、そいつはお前の傍にずっといるのか? それは一生か? 何歳まで傍いる? 先に死んでしまえばそれは一生にはならない。そもそもそいつはお前が好きだと言ったか? 一生ってなんだ? なんの基準でそれを定義する――――」

静香「……――――ッ!」

僕は電話を切った。こわい、と素直にそう思った。

静香「なんなの、ほんと意味わかんない……はぁ。あいつは、そんなことないし」

誰もいない部屋で1人ぽつりと呟く。

静香「そんなことない、し。……ない、よね」

* * * * * * * * * * * * * *
その次の日も私は静香様と2人だけの秘密の場所である庭園へと向かった。

昼休みになると自然に足が庭園へと向かっていた。

日に日に静香様のことが好きになるのが分かった。

静香「……あ、今日も来たんだ。あんたも物好きだよね」

由紀「はいっ! ここ気に入っちゃいました」

静香「……ねえ、言いたいことあるんだけど聞いてくれる?」

由紀「なんですか?」

静香「あんたは僕の傍にずっといてくれるよね? 僕に愛をくれる……?」

由紀「……はいっ! もちろんですっ!」

静香「よかった……。ありがとう」

静香様は優しく微笑んでくれた。それはバラが咲いたような微笑みだった。私はドキッと胸が高鳴った。

静香「これ……あんたにあげようと思ったんだ。受け取ってくれる?」

由紀「これって……バラの花束?」

静香「それここのバラ。綺麗に咲いたから花束にしてみたんだ。それあげる」

由紀「静香様大切に育てていたんじゃないんですか? これ……こんな綺麗なバラ、私が貰ってもいいんですか?」

静香「いいの! 僕があげるって言ったんだから貰ってよ! 言っとくけど、そのバラ返品不可だから! クーリングオフとかないから!」

由紀「あははっ。はい、貰っておきます」

静香「うん……それでいいの」

由紀「何だかこういうのって、プロポーズみたいでロマンチックですね。ふふっ」

静香「みたいじゃなくてそうなんだけど……

由紀「嬉しいですっ! ありがとうございます。大切にしますねっ!」

静香「当たり前だよ。大切にしないとおしおきだからね!」

由紀「はいっ!」

私のこの想いも、静香様に告白してみようかな……。

由紀「静香様、私も聞いて欲しいことがあるんです。いいですか?」

静香「なに?」

由紀「私、静香様のことが好きなんです。最初は恐かったけれど、でも優しい人だと気付いてどんどん好きになっていきました。静香様の全部が好きです。大好きです。私のこの気持ち、受け取ってくれますか?」

静香「……それ、本気? あんた今、僕のこと好きって言った? 嘘じゃない? これ、夢じゃないよね――?」

由紀「……? はい、夢じゃないですよ。現実です」

静香「嘘だ。信じられない、あんたが僕のこと好きだなんて……。そんな幸せなこと夢に決まってる」

由紀「だから夢じゃないですって。どうやったら信じてくれますか?」

静香「……目を閉じて」

由紀「? どうしてですか?」

静香「いいから! 目を瞑るの!」

そう言われて私は目を瞑った。

目を閉じると、静香様の息遣いがより明確に伝わってきた。

静香「ん……チュ……」

由紀「……え」

静香「って、うわぁ! ばか! 目を開けるなってばぁ!」

由紀「すみません……」

静香「返事はこれ。僕がキスしてあげたんだから喜びなよね! ……なにその顔、嬉しくないの?」

由紀「ふふっ。静香様可愛いですね。そんなことないです。すっごく嬉しいです。次は私から……んっ……」

静香「んんっ……!」

由紀「チュ……、んっ……ふ……っ」

静香「……好きだよ、由紀」

由紀「はい。私も、大好きです!」

想いの通じ合った私達はこの2人だけの場所で長い長いキスを交わした。

私は静香様の傍にずっといたい。

不安になったら私の存在を頼りにしてくれたらいいなと思うんだ。

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登場人物紹介

和光由紀 

ヒロイン、だけど周りの女装男子が可愛すぎて霞む。転校生。Gカップ

東十条 静香ちゃん

全6話構成。身長が低いコンプレックスに悩む。親に放任されつつ、監視されている。庭園でお茶したり、読書することが好き。

能代 准ちゃん

全5話構成。学園の女子人気殆どを占める。女の子が好きで、彼女がたくさんいる。楽しいわけではない。

豊前ミカゲちゃん

全8話構成。弓道部のエース。静香様の下僕。静香様をお慕いしている。少女漫画や、ファンシーなものがすき。性同一性障害の気がある。

千倉玲ちゃん

全7話構成。おっぱい魔人。常におっぱいのことを考えている。由紀のおっぱいがお気に入り。

恵村和海ちゃん。

全6話構成。純情少年。喋る猫がでてくるなんかよく分からない個別。

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